お店を作って、木を植える?


食材や日用品がなんでもそろい、便利な暮らしを支えてくれるスーパーマーケット。私たち現代人にとって、なくてはならない存在です。
そんなスーパーマーケットのひとつ、「イオン」グループが、植樹活動に取り組んでいることをご存じでしょうか?

「イオン」が新しくお店を出すたびに、森づくりを手掛けるようになったのは1991年のこと。今年2021年には植樹活動30周年を迎え、これまでに植えてきた木の数は、1200万本にものぼります。

小売事業を手がけるスーパーが、なぜ「森づくり」を始めたのでしょうか。
そこには、ある青年の物語と、持続可能な社会を支える大きな理念があったのです。
 

 

世の中が平和だからこそ、「買い物」ができる


日本全国に展開する「イオン」グループ。多くの人に親しまれる巨大流通チェーンですが、そのはじまりは、ひとりの青年が、戦後の焼け野原から再興した小さな商店でした。
その青年こそが、イオンの創業者、岡田卓也氏です。

「イオン」が30年も木を植え続けるワケ...戦後の焼け野原から続く信念_img1
戦後のあれはてた故郷で、もう一度商売することを決意した岡田青年。絵本『町が生まれ森が広がる』より


岡田卓也氏の半生を描いた絵本『町が生まれ森が広がる 岡田卓也のものがたり』(きむらゆういち:作 篠崎三朗:絵)には、創業当時の様子が次のように描かれています。

「なにもない。」
若者はつぶやいた。
戦争であれはてた故郷にたたずんだ彼には、
絶望しかなかった。

長く続いた戦争が終わったあと、岡田さんが見たものは、焼け野原となった故郷の姿でした。
しかし、すべてを失い絶望しかけた岡田さんを奮い立たせたのが、家業の店を再興し、「商売をしたい」という熱い想いです。大学生だった岡田さんは姉と協力し、小さなお店を始めました。

「イオン」が30年も木を植え続けるワケ...戦後の焼け野原から続く信念_img2
やけあとに生まれたちいさなお店は、みんなの心に灯(ひ)をともした。絵本『町が生まれ森が広がる』より


すると、
「買い物ができて、うれしい。」「平和がもどってきた。」
地域の人々がそういって、つぎつぎとやってきます。しだいにお店は大きくなり、周りに商店も増え始めました。
このときから、
「商売がうまくいくということは、世の中が平和だということだ」
「お客に接し、日々の生活をまもっているのが、お店なのだ」

と、岡田さんは信念を抱くようになったのです。

現代ではこのコロナ禍で、「自由に買い物ができるありがたさ」を、身に染みて感じた読者も多いはず。
きっと、戦争を乗り越えた当時の人々にとっては、「買い物」という行為が今の私たちよりはるかに大きく、「平和」の実感として、喜びと安心を感じられる出来事だったのでしょう。

 


自然が豊かだからこそ、人は生きられる


岡田さんがはじめたお店は成長を続け、次第に大きくなっていきました。協力者も増え、3つの企業を統合し、<Japan United Stores Company>略して、「JUSCO」が誕生します。
その後、さらに発展をつづけたJUSCOは、ラテン語で<永遠>という意味の「AEON」という名前になりました。これが、今の「イオン」グループです。

しかし、順調に会社が大きくなっていく中で、岡田さんには気がかりな事がありました。それは、公害がひろがり自然が侵されている事です。

自然が生き生きしてこそ、人間が元気に生きられる。
人間が元気だからこそ、モノが売れ、社会が発展していく。
地球、自然、人間を考えた商売をしなくてはいけない。

そう考えた彼は、ひとつお店をだすごとに、木を植える活動をはじめました。その地域に自生する植物の苗木を植えていく、「ふるさとの森づくり」です。

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岡田さんが始めた植樹活動は海外・国内で広がり続けた。絵本『町が生まれ森が広がる』より


サスティナブルな社会をめざして


「イオン」グループの植樹活動は、1991年、マレーシアのジャスコマラッカ店(現 イオンマラッカショッピングセンター)をスタートに、2021年の現在にいたるまで続いています。これまでに、海外・国内の各地で1200万本以上の木を植え続けてきました。

環境問題は、私たちの平和なくらしに深くかかわる、人類共通の課題です。

いま、大きな注目を集めているSDGs(持続可能な開発目標)では、「陸の豊かさを守ろう」がゴールのひとつとして掲げられています。
そして、「森林の持続可能な管理」は、このゴールを達成するために必要なターゲットとして設定されているのです。

「平和な社会があってこそ事業は成り立つ」という岡田さんの信念と、そこから生まれた「ふるさとの森づくり」は、まさにこの、森林の持続可能な管理につながる活動です。

普段、なにげなく買い物をしているスーパーマーケット。
その背景には、どんな理念があって、どんな活動をしているのか。

利用者である私たちも、学び、考えていくことが、「サスティナブルな社会」の実現につながっていきます。そのことをぜひ、買い物をするたびに、ちょっと思い出してみてください。

最後に、絵本『町が生まれ 森が広がる』から、結びの言葉を引用します。

「今もこの地球上に、お店は生まれ、町となり、森は広がりつづけている。」


試し読みをぜひチェック!
▼横にスワイプしてください(実際は左開きの絵本です)▼

「イオン」が30年も木を植え続けるワケ...戦後の焼け野原から続く信念_img4
 

『町が生まれ 森が広がる 岡田卓也のものがたり』
きむらゆういち:作 篠崎三朗:絵

『あらしのよるに』のきむらゆういちが贈る、イオン創業者・岡田卓也氏のものがたり。
みんなが知ってる、あのスーパー、どうやってうまれたの? 世界中に笑顔と緑をとどけるための森づくりって?
自然が生き生きしてこそ、人間が元気に生きられる。人間が元気だからこそ、モノが売れ、社会が発展していく。SDGsの先駆けともいえる「植樹活動」を通して、地域社会への貢献と、平和の実現をねがった岡田卓也氏の人生を描く一冊。


構成/北澤智子