読書の秋、本屋さんでおなじみの「選書フェア」をミモレ誌上で展開! 編集部員が1つのテーマに絞って厳選、推薦コメントとともに紹介します。

トップバッターは川良編集長。2人の娘さんの母親としての視点から、これからを生きる世代にすすめたい5冊を選んでもらいました。

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私の父と母は無類の本好きで、「娘に読ませたい本」がそれぞれありました。中学生になると、自分の本棚に両親が薦める本が溜まっていって。プレッシャーだった記憶があるので、私はあまり自分の娘に本を薦めないんです。

ただ、本でも漫画でもシナリオでも「何でもいいから読んでほしい」とは思っています。

物語の世界に没入すること、美しい言葉に心震えたり、揺さぶられたりする体験をしてほしいし、何かを読むことで、世界が拓かれ、世界と繋がれることを知っていてほしい。

14歳といえば、心身ともに調子が崩れやすい時期ですし、部活や課題で忙しくて、あるいはおしゃれやメイクなど、他に興味関心が向いていて、以前に比べて本を読まなくなったという子も少なくないのではないでしょうか。

もちろん「読書が大好きな14歳」もいるでしょうし、いてほしいですが、今回はどちらかというと「読書から遠ざかっている14歳」を想像しながら、広い世界と繋がれるようにという想いを込めて選書してみました。
 

社会の矛盾を乗り越える、そのための言葉を獲得する
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ・著 新潮文庫

14歳の頃の自分は、世界の対立や社会の矛盾を目にしても、それを自分なりに咀嚼し、思いや意見を言語化するのは難しくていつも苛立っていたように思います。

こちらは人種や貧富の差とそれを乗り越えようとする「エンパシー」の今について語る言葉を得られる本。平易な言葉で綴られた同世代の男の子の話なので読みやすいのでは。この記事のために文庫版を新たに購入したら、ときわ書房の書店員さんの「解説」がまた素晴らしかったんです。14歳には、この文庫版をぜひおすすめしたいですね。

気に入ったら、ミモレでも著者インタビューを掲載した『両手にトカレフ』も読んでほしいです。

 

生きづらいのは、きっと自分だけじゃない
『光の海のガレオン/オルタ』

『光の海のガレオン/オルタ』木地雅映子・著 ピュアフル文庫

自分が人と違っていて生きづらいと思ったときに、世界にたった一人、私だけ生きづらいと思うのと、そうじゃないと思うのとでは全く意味合いが違いますよね。「ひょっとして親や周りの大人もそうなのかも?」と思えたらラクになることもあります。

この作品に出てくる風変わりな大人たち、子どもたちを見守る庭のナツメの木に心地良く許される、生まれてきたことを肯定してもらえる一冊です。

 
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