北海道だから生まれた設定、景色。長期撮影でじっくりと作り込めた作品に
——也英や晴道は北海道で生まれ育ち、2人が壮大な自然をバックに心を通わせるシーンでさりげなく宇多田さんの楽曲が流れると、感動の相乗効果が凄まじかったです。どんな狙いがあって舞台を北海道にしたのでしょうか?
寒竹:単純に、東京のロケに飽きていたのが理由のひとつです。コロナ禍で安全に撮影できる場所は限られますし、そうすると、どの作品も似通ったロケーションで撮影することになってしまうんですよね。また、也英が空に憧れている、という人物像にすることを思い付いたときに、北海道であればそれがより身近に感じられるとも思いました。北海道は大空を飛び回る戦闘機を日常的に見かけますし、コンビニや駅に自衛隊のポスターが貼ってあるのが当たり前の光景だったりするので、興味を抱きやすい環境なのではないかと。北の果てに住んでいるという設定も好ましく思えたので、そこは早い段階から決めていましたね。
——也英が好きなライラックの木に満開の花が咲いているシーンは、他の作品では見たことがないくらい美しかったです。
寒竹:毎年5月に「さっぽろライラックまつり」というイベントがあるくらい、札幌の人にとってライラックは身近なんですよね。ただ、公園に植栽された木ではなく、自然環境で大きく育っている木を探していたのですが、なかなかなくて。結局、理想的な場所に自分たちで植えることにしました。満開に咲くまでの間、鹿に食べられないように、スタッフが定期的に見回りしてくれたりして。それほどみんなが頑張って作り上げた景色なので、思い入れは強いですね。
——壮大な計画ですね。四季をまたいで行なわれた撮影は計8ヵ月間の長期にわたり、劇中には北海道のロケーションをメインに、10都道府県、250ヵ所を超えるロケ地が登場します。そうやってじっくり作り込むことができたのは Netflixのサポートがあったことも大きいのでしょうか?
寒竹:そうですね。コロナ禍で撮影が延期になり、業界全体でお蔵入りになってしまう企画がたくさんありました。今回はお金がかかる作品だったからこそ、そうなってしまう可能性がいくらでもあったのですが、脚本を信じてゴーサインを出し続けてくれたのはNetflix だったからだと思います。私が信頼されていたというよりは、みんな、快くOKをくださった宇多田さんのために最後までやり遂げたかったほうが大きいかもしれませんが(笑)。
Netflix シリーズ「First Love 初恋」
取材・文/浅原聡
構成/坂口彩
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