峰なゆかさんが妊娠・出産の「当たり前」を自身の体験からぶった斬る漫画『わが子ちゃん』。「平日9時5時の罠」「妖怪エストロゲン!」「無痛分娩は『無痛』じゃない」……キレッキレの視点で峰さんの出産体験が綴られます。峰さんは、出産の前にも大きなハードルがあったそうです。それは、妊娠糖尿病。

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オシャレ病院で出産するはずが、厳しい基準で妊娠糖尿病と診断され、総合病院に転院しなければならなくなった峰さん。33週目にして芸能人御用達のセレブ病院に入院が決まります。そして、無痛分娩を選ぶ人が20%しかいない事実を知り、叫ぶ峰さん。

 

峰さんは妊娠糖尿病のため、毎日血糖値を測るハメになったのですが、病院で無料貸出してくれるものだと1日6回、指先に針を刺して血を絞りとらないといけない。自費購入する機械の方が楽じゃん、って思っていたら⋯⋯。

 

夫のチャラヒゲさんにヤクザ映画のような覚悟と勢いで刺してもらい、血糖値との戦いが始まったのでした。野菜スープだけしか食べてないから大丈夫なはず、と思ったらトマトのせいで数値が爆上がりしていたり。

 

もともと「ヤニカス(ヘビースモーカー)」だった峰さんは妊活三ヵ月前から禁煙薬と根性でタバコを止めていました。タバコも炭水化物も制限している自分に対し、夫のチャラヒゲは変わらず好きなお酒を飲んでいることが、ものすごくムカつくようになってしまったのです。彼に酒を飲んでほしくないけどこちらから禁酒はさせたくない。この精神的な危機を二人はどうやって乗り越えたのでしょうか。

 

また、妊活を考える夫婦が密かに気にする「4月2日問題」についても語られます。わが子ちゃんの出産予定日が4月5日と聞いて喜ぶチャラヒゲさん。小さい頃は特に同学年でも4月2日以降生まれと3月生まれだと成長度合いがかなり違うので、4月生まれの方が子ども自身も親もストレスを感じにくいはずだ、と彼は説きます。絶対4月2日以降に産みたい、無痛分娩なら狙って産めるはず、と思ったのですが女医から予想外の一言。

 

ここから平日9時5時以外の時間に陣痛が来てしまったらどうしよう、という恐怖を抱える毎日を過ごすことに。無痛分娩を希望していた人が急遽普通分娩になったらただでさえ辛い出産時にメンタルも最悪になるにちがいない。そう考える峰さんは、普通分娩だった人から言われがちなこんな言葉に一撃をくらわします。

 

これぞ、出産直前に感じるリアルな感情⋯⋯! 産んだ後の日々で忘れ去られてしまうような感情だけでなく、臨月期の体調もリアルに描いてくれています。

本当に⋯⋯? 本当に浜崎あゆみも鈴木えみちゃんもマリーアントワネットもこの痛みに耐えたの⋯⋯?

38週目、最高潮に辛いつわりの時期と同じくらい、体調が悪くなり、こうつぶやく峰さんによる「臨月の妊婦は半分赤子説」。

 

体が痛くて、夫の完全介護がないとシャワーも浴びれない。臨月とは産まれる子を穏やかに待つ女神のようなものではなく、食う・寝る・排泄がギリギリできる衰弱状態だというのを書き留めてくれているー!!

ついに出産の時。全然「無痛」じゃない無痛分娩の壮絶な様子と、産まれたわが子ちゃんへの正直すぎる第一印象とは⋯⋯? ぜひ本編で確認してみてくださいね。 

本作では妊娠周りのキラーワードが続出。
・陣痛は「私の内臓をストレスボール代わりに掴んでニギニギする鬼」
・吸引分娩で赤ちゃんが出てきた時の感覚は「詰まった毛穴から巨大な角栓が抜き出される時のような感覚」
・産後3日目の胸は「童貞が想像で描いた巨乳みたいになってる」
など笑いながらも「すごくわかります」「わかりやすいです!」と言いたくなる表現ばかり。
病院や経産婦の間で「こんなものだ」と常識のように言われてきたものを受け流さないで躊躇なく叫ぶ峰さん。そうだった、妊娠・出産って「ありえない」がいっぱいなことなんだよね⋯⋯とハッとするのです。妊婦だって痛かったら大声で泣くし、わがままも言いたいし、ギリギリまで我慢しまくっているし、出産前後の母体ではグロテスクなことが起きまくっているし、産まれたばかりの赤ちゃんに「かわいい」より別の感想が出ることもある。世間がどうこう言おうと、妊婦自身の主観が一番だ! という叫びが聞こえてくるような一冊です。 
 

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『わが子ちゃん』第2巻
峰 なゆか (著)

『アラサーちゃん』の峰なゆか最新作 痛快すぎるシン・育児漫画第2弾!! 育児にまつわる常識、欺瞞、男女不平等を問い直し、新たな出産・育児・家族のかたちを提案する革命的育児漫画第2巻!「『母性☆』とか『イクメン☆』とか『パパは新入社員☆』とかいった妄言をぶち殺すつもりで描いていきますのでよろしくお願いします」という宣言通り、「あー、私も射精ピュッピュ係がよかった!」「なんでおめーが金玉の中で胎児育てねーんだよ!」などの名言が満載で、1巻発売時から大きな話題を呼んだ本作。2巻ではいよいよ出産編に突入!



作者プロフィール 

峰なゆか
マンガ家。女性の恋愛・セックスについての価値観を冷静かつ的確に分析した作風が共感を呼ぶ。『アラサーちゃん 無修正』(扶桑社)、『アラサーちゃん』(KADOKAWA)はドラマ化もされ、累計70万部超のベストセラーに。現在は育児漫画のほか、自伝的漫画『AV女優ちゃん』、ファッションエッセイ『オシャレな人って思われたい!』を連載中。
Twitterアカウント:@minenayuka
Instagramアカウント:@minenayuka

 


構成/大槻由実子
編集/坂口彩
 

 

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