アラサー女性のホンネを赤裸々に描いた『アラサーちゃん』から数年後、峰なゆかさんが女性ばかりが負担を背負う育児に疑問を投げかけ、新しい夫婦関係と育児の形を提案します。その名も『わが子ちゃん』。峰さん自身の妊娠・出産経験をもとに描いたエッセイコミックです。
冒頭は、出産後「今日から赤ちゃんとの日々が始まるのか⋯⋯」と覚悟を決めている様子の峰さんと、夫の「チャラヒゲ」さん。彼が最初に宣言します。
チャラヒゲさんはなぜ「育児担当宣言」ができる男になったのでしょうか? 時はさかのぼり、9ヶ月前の妊娠判明から、出産までの七転八倒の日々をつづります。
妊娠がわかり「24時間 腹に銃口を突きつけられる生活が始まった」とつぶやく峰さん。
彼女はとにかく食べずにはいられない「食べづわり」タイプでした。
この時点では、「食欲旺盛だね!」と峰さんの苦しみは他人事で、のんきにキラキラしているチャラヒゲさん。後に「育児担当宣言」するようにはとても見えません。つわりがあるのがデフォルト、具合が悪くない日はむしろ心配になる峰さんに、根拠のない励ましをする始末。
このロシアンルーレットのたとえ、男性にとっては非常に体感を持って理解できるのでは⋯⋯? こんな感じで妊娠初期に峰さんがめちゃくちゃキレたことで、チャラヒゲさんは協力的になり、峰さんのために料理をするなど、あれこれ尽くす夫になっていきます。ところが彼の協力もむなしく、つわりは治まる気配がありません。辛い中、峰さんがブチ切れたのはともすれば口にしてしまいがちな「キラキラ妊婦発言」でした。
妊娠で変わるのは身体だけではありません。この「世界一短い小説」の例がとても具体的でわかりやすいのです!
女性は妊娠で心も変化していく。でもおおくの男性はすぐには変われない。「愛情格差」を無くすため、峰さんはチャラヒゲさんに父としての主体性をもたせる作戦に出るのですが、これまたユニーク、かつ効果的。
ポイントは出産前にしっかり自覚させていくこと。本作の表紙には「育児は産む前から始まっている!」と書かれているのですが、子どもが生まれた後、急に父としての主体性を持たせるのは、もしかして至難の業なのか⋯⋯!
こうして夫に「育児担当宣言」を自発的にさせるまで、峰さんは出産までの間あちこちに戦略を仕掛けています。その姿は名プロデューサーのよう。ちなみに、『女子SPA!』連載時のタイトルは『チャラいヒゲ、子を育てる』。育児は父親がするもの、という価値観をはっきり打ち出しているんですよね。
妊娠中のつわりなど、女性の負担を具体的に描き「見える化」しているからこそ、男性が育児を担当するのは「正論」と思える展開になっています。
峰さんは連載開始時に意気込みを語っています。「チャラいヒゲとの間に子供を作ることを決めた私。妊娠出産は私が全部やるしかないんだから、当然育児はチャラヒゲが全部担当。『母性☆』とか『イクメン☆』とか『パパは新入社員☆』とかいった妄言をぶち殺すつもりで描いていきますのでよろしくお願いします」
出産や育児にまつわる「キラキラワード」をコミカルながらも真剣に否定し、新たな価値観を提案していく本作。表紙もあえて育児マンガらしからぬデザインにしたそうです。妊娠出産を経験した人も、そうでない人も、老若男女問わず読んでほしいです!
【漫画】『わが子ちゃん』第1話から5話まで試し読み!
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『わが子ちゃん』
峰 なゆか (著)
『アラサーちゃん』の著者・峰なゆかによる初の育児漫画第1巻がついに発売!「こっちは妊娠出産全部やらなきゃいけないんだから、育児は全部男の仕事だよね?」「あー、私も射精ピュッピュ係がよかった!」「なんで男が金玉の中で胎児育てねーんだよ!」などの名言が炸裂! 育児にまつわる常識、欺瞞、男女不平等を問い直し、新たな結婚・出産・育児・家族のかたちを提案する革命的育児漫画! 現在育児中の男女はもちろん、これから出産を考えている人にとっても新たなバイブルとなること間違いなしの一冊。
作者プロフィール
構成/大槻由実子
編集/佐野倫子
峰なゆか
マンガ家。女性の恋愛・セックスについての価値観を冷静かつ的確に分析した作風が共感を呼ぶ。『アラサーちゃん 無修正』(扶桑社)、『アラサーちゃん』(KADOKAWA)はドラマ化もされ、累計70万部超のベストセラーに。現在は育児漫画のほか、自伝的漫画『AV女優ちゃん』、ファッションエッセイ『オシャレな人って思われたい!』を連載中。
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