サンタクロースの伝承は国によって少しずつ違いますが、本場・ドイツの「クネヒト・ループレヒト」の話を聞いたことはありますか。聖ニコラウスが良い子にご褒美を与える赤いサンタクロースなのに対し、その従者であるクネヒト・ループレヒトは悪魔のような姿をした黒いサンタクロースで、悪い子に罰を与えるのだそう。日本の「なまはげ」みたいですよね。
この黒いサンタクロースを『聖☆おにいさん』の作者が新しい解釈で描く『ブラックナイトパレード』。12日23日に吉沢亮さん主演で映画が公開されます。

『ブラックナイトパレード 1』 (ヤングジャンプコミックス)

「良い子のところにだけ赤い服を着たサンタがやってきてプレゼントをくれる」と言うけれど、本当のクリスマスはもっと公平だ。大学受験に失敗し、就職もできないまま気づけばコンビニバイト三年目の日野三春くん。要領のいい後輩に就活も彼女も先を越され、しまいには廃棄のケーキを食べようとしていたと店長に誤解されます。

 

何かがぷちっと切れた三春は廃棄予定だったケーキをそのまま持って帰ってしまいます。

 

子どもの頃はサンタが必ず来てプレゼントをくれた。だけど、大人になった時のクリスマスは、不採用通知が届くだけの日になってしまった。よくこんな日に送ってよこすよな、と絶望していると、謎のホルモン屋台を見つけます。思わず入って、愚痴る三春。今日忙しいのは仕事があるだけいい!!ブラック企業でもいいから働きたい!! よく見ると黒いサンタ服を着ている屋台の店主は、奇妙な話をするのです。

 

ところでお客さん、切ってお出ししましょうか。そこのケーキ。

バイト先から勝手に持ってきたケーキのことを急に言われ三春が口篭もっていると、不気味な液体が頭から垂れてきて、「罪悪感たっぷりに万引きした」ことを知らないはずなのに店主に言われます。

 

もっともっと悪い子には⋯⋯

三春は歯と舌のある大きな袋に全身呑み込まれ、気絶します。目覚めると、就職先が決まっていた!?

そこは、サンタの会社で手取り30万、3食つきの寮完備で共に働く仲間も優しい。ホワイトな労働環境に思えるのですが三春は信じられないでいます。

 

サンタの会社だなんてファンタジックな仕事だと思いきや、やっていることは超リアル。「黒いサンタの魔法」を使って悪い子を探すと言いつつ、実際は人工衛星で監視して、赤外線カメラなど現代テクノロジーを駆使して見つけ出すシーンには爆笑!

 

子どもたちのプライバシー無視で悪行を探し出す黒サンタ集団にドン引きする三春でしたが、そもそもサンタクロースって⋯⋯と指摘されます。

 

可愛いなと思っていた同僚の女の子が子どもを追いつめている時にめちゃくちゃ悪どい顔をしていたのも思い返し、泣く彼。

 

この"犯罪集団"で三春は働き続けられるのでしょうか? ドイツの伝承では聖ニコラウスとクネヒト・ループレヒトは一緒にいるはずなのですが、このサンタ会社には「良い子にご褒美をあげる」的な業務がなく、赤いサンタクロースの姿が見えないのも謎で、ちょっと不気味⋯⋯。

『聖☆おにいさん』にも感じましたが、作者の中村光さんはみんなが知っている伝承を、現代社会の感覚で解釈しコメディに仕上げるのが天才的。そして、映画主演の吉沢亮さんが、周囲に振り回されるタイプの三春をどんな風に演じるのかも楽しみです。映画を観るか、漫画を読むか。どっちを先にしますか?

 

【漫画】『ブラックナイトパレード』第1話を試し読み!
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『ブラックナイトパレード』
中村 光 (著)

『聖☆おにいさん』『荒川アンダー ザ ブリッジ』で知られる中村光の10年ぶりの新連載! ブラックなサンタにスカウトされて、内定したのはブラック会社!?


 

中村 光
2001年『海里の陶』で「月刊ガンガンWING」(スクウェア・エニックス)にてデビュー。2004年に「ヤングガンガン」(スクウェア・エニックス)で『荒川アンダー ザ ブリッジ』、2006年には『聖☆おにいさん』を「モーニング・ツー」(講談社)にて連載開始。シュールさとまったり感をうまく調和させたギャグで注目を得ている。
Twitterアカウント:@hikanaka1217

 


構成/大槻由実子
編集/坂口彩