民放の連ドラでは『競争の番人』(フジテレビ系)に主演。こちらは過去作の『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)に通じるような、集団行動に馴染まない天才肌といった役どころ。飄々とした変わり者は、真面目な好青年に並ぶ坂口健太郎にとっての十八番で、宿敵・藤堂事務次官(小日向文世)との対決では、抑制の中にヒロイズムを迸らせ、観る者を惹きつけました。

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坂口健太郎さん、2022年はミモレにも初登場いただきました! ドラマ『競争の番人』出演時のインタビューはこちら写真:塚田亮平

好青年と変わり者。2つの当たり役を持っていることが俳優としての強みですが、似たような役柄が続くと、どうしても既視感が強くなり新鮮味に欠ける面も。そういう意味でも今年の坂口健太郎は強かった。

 

『ヒル』(WOWOW)で演じたカラは、復讐のためだけに生きる孤独な男。その生気のない眼差し。乾いた台詞回し。感情を司る回路をごっそりと捨ててしまったような佇まいは、ピュアな菅波先生の印象を一瞬でひっくり返すようなインパクト。退廃的な色気を漂わせ、最終回では『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』で磨いたアクションを披露。凄絶な肉弾戦に気迫と血生臭さをもたらしました。

 

そんなアクションをさらに進化させたのが映画『ヘルドッグス』。カラ同様、アンダーグラウンドな役柄ですが、無機質な表情の裏側に人間味をにじませたカラとは対照的に、本作で演じた室岡は一見すると人なつっこい陽キャ。でも、その無邪気な笑顔の下にあるのは、父親に求められなかった絶望と、そんな自分をそれでも愛してくれる人を求める希望。残虐な幼児性と、一途な暴力性を宿した室岡は、俳優・坂口健太郎の次なる地平を期待させてくれるものでした。


テレビという大衆的なフォーマットでは鉄板キャラで安心感を与えつつ、映画や衛星放送では大胆なチャレンジで新境地を切り開く。ある意味、俳優としては理想的なキャリアビルディングだったと思います。そして、その振り幅の広さにファンはますますのめり込む。これが、坂口健太郎のヤバさの理由のひとつです。

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映画『ヘルドッグス』2022年9月16日公開。 ©2022「ヘルドッグス」製作委員会

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好きなものは「坂口健太郎の腕まくり」です


ですが、坂口健太郎が「リアコ製造機」たる所以は、演技力だけではありません。インタビューやバラエティ番組などから垣間見える人柄そのものが沼。

彼の魅力を流行りのドラマの言葉を借りて語るなら、「キラキラ」もさせてくれるし「ぽわぽわ」もさせてくれる、ハイブリッド男子であることでしょうか。

何せ元メンズノンノモデル。スタイルの良さはもはや説明不要です。あっさりした顔立ちは、すましていると体温低め。薄い色素に、大きめのごつごつとした手。読書家というプロフィールから漏れ出る文化系の匂い。その面影は、ある特定の層を狂いに狂わせまくった「いくえみ男子」の正当継承者です。そんなもん、ときめかないわけがない。

ざっくりニットが似合いすぎて、ニットを着て生まれてきたと言っても納得のレベル。しかも、袖をまくったときの腕の白さが眩しすぎて、もはや肘から下が完全に発光ダイオード。あの瞬間、プロフィールの好きなものの欄に「坂口健太郎の腕まくり」が加わりました。さらに筋張った手の甲から溢れる男っぽさが、心拍数を加速させる。高校卒業時に第2ボタンどころかカバンのボタンまでなくなったというモテエピソードもさもありなん。坂口健太郎は、ただそこにいるだけで、いつでも、どんなときも、世界の照度を上げてくれる最強のキラキラ男子なのです。