「フキハラ」から身を守るのは物理的な距離


ストレスの厄介なところは、その記憶が脳に焼きつきやすいことです。つまり、強いストレスを感じる経験を重ねてしまうと、その印象が強く記憶に残り、そのときの場所や一緒にいた人自体にストレスを感じるようになる危険があるのです。「不機嫌ノーラ」の“家庭内感染”が繰り返された場合、家族の誰かの存在や家庭そのものがストレスを高める原因になってしまいかねません。では、そのような「不機嫌パンデミック」を起こさないため、そもそも「フキハラ」の被害に遭わないためにはどうすればいいのでしょうか? 

最も手っ取り早いのは、「不機嫌ノーラ」を発信している人から物理的な距離を置くことです。

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「不機嫌ノーラ」からの距離が近いほど、また「不機嫌ノーラ」にさらされる時間が長いほど影響が大きくなるので、例えば家族の誰かが不機嫌そうにしているのに気づいたら別の部屋に早めに避難するとか、状況が許すなら外に散歩に出かけるというのもよいでしょう。上司の機嫌が悪いなと思ったらさっさとその場を離れ、必要以上に近づかないのが賢明です。また、チームで取り組んでいるプロジェクトが行き詰まったときなども、一旦解散して、それぞれがしばらくの間、別の場所で過ごすのがよいと思います。とにかく「フキハラ」に関して言えば、まさに「触らぬ神に祟りなし」なのです。

 

「物理的な距離を置く」というのは、「不機嫌ノーラ」の発信者になりそうなときにも、もちろん心がけるべきことです。自分自身がイライラしたりモヤモヤしたりしているときは、できるだけ一人で過ごすようにすれば、「フキハラ」の加害者になるのを未然に防ぐことができるでしょう。そういう意味では、最近ではメジャーになったテレワークは会社内の「フキハラ」を未然に防ぐ方法としてはかなり有効だと言えます。ただしそのぶん家で家族と一緒にいる時間が増え、家庭内「フキハラ」のほうはむしろ増えているかもしれません。そこはなんとも悩ましいところですね。