「フキハラ」加害者から離れられないときはどうする?


「不機嫌ノーラ」から距離を置きたくても、その場を離れようとすると相手がますます不機嫌になるとか、状況的にどうしてもその場にい続けなければならないこともあるでしょう。私の場合は、自分の周りに見えない「ドーム」があることをイメージして、さらに、楽しい音楽を聴きながら作業や仕事をするようにしていますが「ネガティブな感情」をコントロールする対策を早めに講じることも大事です。

具体的にはゆったりとした音楽を聴く、心が癒されるような(例えば可愛らしい動物などの)映像を見る、といったことが挙げられます。

好きな香りを嗅ぐことにも高いリラックス効果があります。データ3は、事前に聞き取っておいた「好きな香り」を30秒間嗅ぐとストレス度を示す脳波がどれくらい治まるかを調べた実験結果です。

【データ3】好きな香りによるストレスの変化

 

たった30秒間で、「ストレス度」を示す脳波は8%も弱まっています。この高い効果を見逃す手はありません。例えば、アロマディフューザーなどを使って自分の好きな香りに包まれる環境を作っておけば、「不機嫌な人」のそばにいる、つまり「不機嫌ノーラ」にさらされているときでも、ストレスをかなり抑えることができます。好きな香水を嗅いだりするのも「フキハラ」からの防御策として有効でしょう。

 

もしも「不機嫌ノーラ」を発信する人にとってもそれが好きな香りなら、発信者側のストレスを低減する効果も期待できます。そうすれば、「フキハラ」を元から断つことも可能かもしれません。ただし、あなたの好きな香りが、相手にとって嫌いな香りの場合は逆効果になりますので、そこは注意が必要です。


著者プロフィール
満倉靖恵(みつくら やすえ)さん:

慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授/慶應義塾大学医学部精神神経科学教室兼担教授/電通サイエンスジャム取締役CTO/株式会社イーライフ取締役CTO/博士(工学)/博士(医学)。生体信号処理、脳波解析などをキーワードに、脳神経メカニズム・感情・睡眠・うつ病・認知症などに関する研究に従事。特に医工連携型研究に注力。電通サイエンスジャムと共同で、世界初の脳波によるリアルタイム感情認識ツール「感性アナライザ」を開発。リサーチ、商品開発など世界中で活用されている。心拍のみを用いた自律神経の動きに注目した睡眠の5段階解析、非侵襲ホルモン解析などの専門家。

『フキハラの正体』
著者:満倉 靖恵 ディスカヴァー・トゥエンティワン 1210円(税込)

脳波の研究を通して分かった人間の感情の驚くべき真実を伝えつつ、「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」の実態や対処法を紹介。また、実態が見えづらい「心の不調」の影響についても、脳波データから客観的に分析します。フキハラは老若男女問わず「加害者」になる可能性が高いハラスメントだけに、予防の意味でも読んでおきたい一冊です。


構成/さくま健太