※当記事は、作品の内容に関わる記述を一部含みます。
これが大人の恋愛!? 自分を飾らずにいられる心地よい関係。
ヘンソンはシングルマザーとお伝えしましたが、実は娘として育ててきたヘイは、娘ではなく姪っ子。実の母親に捨てられたヘイを守るため、母親の代わりとしてヘイに惜しみない愛情を注いできました。
そしてヘンソンには、自閉スペクトラム症の弟・ジェウもいます。
二人の家族のために夢も恋愛もすべて諦め、一家の大黒柱として生きてきたヘンソン。しかし自分の人生を犠牲にしてきたというような悲壮感は一切なく、いつもポジティブでエネルギッシュ。そんな彼女が、ヘイが通う塾のカリスマ講師であるチェ・チヨルと出会い、次第に距離を縮めていくのです。
チェ・チヨルは一見すべてを手に入れた完璧な男性のように見えますが、彼も彼で、心に闇を抱えています。世間からは「一兆の男」(一兆ウォンの経済効果を生む男という意味)と持て囃されながらも、その影では不眠症や摂食障害に苦しむ日々を送っていたのでした。チェ・チヨルはヘンソンと出会ってから少しずつ苦しみから解き放たれはじめます。
二人が醸し出すほっこりとした優しい空気感は、新鮮味のあふれるスピード感のある恋愛とは異なるものです。人生でさまざまな経験を重ねてきた二人だからこそ、お互いのすべてを包み込むような温かくて深い関係が生まれるのでしょう。
そして、『イルタ・スキャンダル』が従来のラブコメ作品と一線を画しているのは、ヒロインのキャラクター。
ヒロインのヘンソンは、ファッションも個性的。半袖の開襟シャツにハイウエストのデニムを合わせ、髪もゆるいパーマをひっつめただけのスタイルで、配達用バイクを乗り回しています。
これまで女手ひとつでヘイとジェウを守りながら、惣菜店も経営し、一家の大黒柱として生きてきたヘンソン。そんな彼女ならではのパワフルでたくましい雰囲気は、従来の恋愛ドラマのヒロインには決してないものです。ヘンソンのありのままの姿が、「自分を飾らないでいられる大人の恋愛関係の心地よさ」を物語っている気がしました。
結婚していなくても子どもがいなくても、いろんな「絆」がある
そしてヘンソンとチェ・チヨルは、単純に“男と女として二人の距離を縮める”のではなく、ヘイやジェウも含めた家族としての絆を深めていきます。
『イルタ・スキャンダル』が多くの人の心を捉える理由のひとつが、ヘンソン一家が見せてくれる「新しい家族のかたち」にあるのではないかと思います。
未婚のヘンソンを取り巻くのは、姪っ子のヘイ、弟のジェウ、親友のヨンジュ。そしてそこにあらたに加わった恋人のチェ・チヨル。
ヘンソンにとってヘイやジェウは、我が子でなくても命を懸けられる存在ですし、彼らがお互いを守り支え合う姿からは、従来の家族のかたちを超えた絆もあるのだと感じます。
感動した、というと大げさだと思われてしまいそうですが……。個人的に、子供がおらず、今後も子どもは持たなくていいと決めた自分にとっては、いろんな人間関係があって、いろんな「絆」があるのだと教えられた気がして、なんだか勇気づけられたのです。
ちなみに本作品をきっかけに、私の心の奥底に眠っていた恋愛願望が、目を覚ましたかもしれません(笑)。
これまで「恋愛願望がない」と言うと、同世代の友人からも年上の先輩からも「何言ってんの!? まだまだこれからでしょ!」とお叱りを受けてきました。
その都度、「そう言われても、恋愛するエネルギーが湧いてこないんだもの……」と思っていたのですが、『イルタ・スキャンダル』を見ていたら、こういう穏やかでほっこりした恋愛だったら、またしてみたいなあ……という感情が湧いてきました。若いときとはまた違う、大人の恋愛の醍醐味があるのかもしれない、と思えたのです。
とにかくリアル! 韓国一の教育エリアで繰り広げられる受験戦争
また、『イルタ・スキャンダル』では、韓国の熾烈な受験戦争の模様が描かれているのですが、それが非常にリアルだということでも話題になっています。
ドラマの舞台となっているのは、ソウル江南区テチ洞。ソウル一の教育エリアと呼ばれる地域で、塾がひしめくように並んでいることで有名です。
ドラマにあったように、塾が終わる時間になると保護者たちの迎えの車が列をなし、周辺は渋滞となるのだとか。また、チェ・チヨルのようなアイドル的人気を誇るカリスマ講師も実在し、受講希望者が殺到するそうです。クラスを受講するために先着順を競って、お母さんたちが早朝から押しかけるシーンもありましたね。ドラマだからデフォルメされているかと思いきや、これがリアルだというから驚きです。
恋愛要素だけでなく、韓国の教育事情や家族の絆、さらにはサスペンス要素も掛け合わせており、見ごたえはかなりのもの。『イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~』、ぜひご覧ください。
後編はこちら
後編では、ドラマ中に出てきた韓国料理のレシピを公開中!>>>
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構成/山本理沙
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