命の危険があり、日本に逃れてくる外国人。そして、日本に何十年も住んでいたり、日本で生まれ育ち日本語しか話せなかったりする外国人。彼らは、在留資格が切れると入管施設に収容されるか、仮放免という状態になります。仮放免になると、働くことができず、収入が絶たれ、実質ホームレス状態になり飢え死にせざるをえないような状況に置かれます。さらに健康保険に入れず、病気の治療ができないことも多いのだと言います。そんな困窮する外国人を支援する、つくろい東京ファンドの生活支援スタッフである大澤優真さんは、まずは“いるのにいないことにされている”外国人の存在を知って欲しい、と話します。全三回の最終回は、命の瀬戸際に立たされる人の支援を行う現場の現状についてです。


第1回「ただ生きのびるために日本に逃れてくる外国人を知って欲しい【入管法改正・仮放免の現実】」>>

第2回「収入を絶たれ困窮するだけではない。働く尊厳を奪われる外国人の声【入管法改正・仮放免の現実】」>>

 
仮放免とは?外国人が日本で生活するためには、「在留資格」が必要です。在留資格は用途によって29種類に分かれており、それぞれ期限があります。その期限が切れると、「オーバーステイ」という状態になり、原則として入管施設に収容されます。しかし、健康に問題があるなど様々な理由で一時的に収容を停止し、拘束を解かれた状態を「仮放免」といいます。


仮放免の外国人は、ごく普通の人
 

——仮放免の人たちの状況を改善するために地方自治体で何か取り組みをすることはありますか。例えば、同性婚が法律で認められていないため、自治体が独自でパートナーシップ条例を導入したりして、自治体が法律が追いついていないところをカバーすることはあると思います。仮放免の方に関して、そういった動きはないのでしょうか。

自分が断ったら、この人は死んでしまうかもしれない。公的制度の空白を埋める現場の限界【入管法改正・仮放免の現実】第三回_img0
写真:Shutterstock

大澤優真さん(以下:大澤):2020年12月に、埼玉県川口市の奥ノ木信夫市長が法務省で上川陽子法相と面会し、入国管理制度の改善を求める要望書を渡したということはありました
しかし、他に何か特別にやっている自治体はほぼないです。なぜかというと、一番大きい理由は、そもそも現状が知られていないことだと思います。仮放免と聞いてそれがなにか分かるのが100人に1人くらいですよね。
「在留資格ないんでしょ」、「じゃあ犯罪者なんでしょ」、という風に理解されている。不法滞在者=犯罪者、極悪人のように思われていると思います。そうではなく、みなさん隣にいる、街を歩いている、ただ普通の人なんだということを頭の片隅にでも入れておいて欲しいです。そういう人たちが、病院にも行けないし、働けないし、家賃も払えないという状況に立たされています。そして必ずしも悪いことをしたから在留資格を失ったというわけではありません。


大澤優真さん1992年千葉県生まれ。一般社団法人つくろい東京ファンド生活支援スタッフ 。 主に仮放免の状態にある外国人の生活支援を担当。日々困窮者の支援に奔走する。NPO法人北関東医療相談会事務局スタッフ・理事も務め、大学で教鞭をとる(公的扶助論・福祉制度論)。社会福祉士。著書に『生活保護と外国人 「準用措置」「本国主義」の歴史とその限界』(明石書店、2023年3月発売)がある。
 


——国に帰ろうにも帰れないなどの理由から、結局オーバーステイ(在留資格期限切れ)になってしまったケースも多く、意図的に悪いことをしようとしている人ばかりではないということですよね。

大澤:そうなんです。またたとえ自治体が仮放免の状態に置かれている人の状況を把握していたとしても、独自の取り組みをやってしまうと、問題になってしまうというのもあると思います。仮放免者は住民票がないので、「住民税を払っていないという人にサービスをするのか」と言った、排外的な人からのクレームが来てしまう恐れがある。でも実はオーバーステイになっても住民税は払えるんです。実際、払っている人もいます。在留資格を打ち切られるまでの9年間、住民税や所得税をずっと払ってきた方もいました。

——実際住んでいる、税金も納めている、なのに住民サービスを受けられないということですね。