インターネットを起点に多大な反響を集めた岸田奈美さんの自伝的エッセイ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』がドラマ化されます。
病気によって車椅子生活を余儀なくされる母・ひとみを演じるのは、坂井真紀さん。自身も11歳の娘を持つ母である坂井さんに、作品のこと、そして気になる子育てについてたっぷりお話しいただきました。
どん底から立ち上がれる強さが、親にはある
――原作のエッセイを読んで、どんなことをお感じになりましたか。
人って生きていれば日々いろんなことがあるじゃないですか。でも、どんなに辛いことがあっても明るく笑い飛ばして前に進むことが大事なんだなと思わせてくれるエッセイでしたね。
だから、今回、ドラマに参加させていただくにあたっても、私が原作を読んだときに感じた、背中を押してもらった感覚を届けられたらいいなと。ドラマとして動き出した中で新しく生まれる世界観も楽しみつつ、原作の素敵なメッセージはいつも心に置いて演じていました。
――ひとみはダウン症の息子を抱える母としての一面もあります。役づくりで参考になさったことがありますか。
まずダウン症児のお母様の手記を読ませていただきました。どのように日々の生活を送っていらっしゃるのかを知り、そして様々な思いをいただきました。あとは現場に(草太役の)吉田葵くんのお母様もいらっしゃったので、どういう距離感で接しているのか、お2人のやりとりの様子を見させていただいたり。実際に葵くんと接しながら、自分がお母さんだったらこうかなと想像してみたり、現場に入って学ぶことも多かったですね。
――夫を亡くし、2人の子どもを自分が育てていかなければという責任を背負いながら、ひとみは病気によって足が不自由となります。
やっぱり親って自分のことより子どもの人生が第一。子どものために何かしてあげたいのに、してあげるどころか自分が迷惑をかけることの方がこれから多くなると考えたら……。親としていちばん辛いことだったろうなと、私も娘がいますので、ひとみの気持ちは痛いほどよくわかりました。
――もし坂井さんがひとみと同じ立場だったら、どうなっただろうと想像しましたか。
一度は気持ちがどん底になると思います。けれど、きっとどこかで親としてできることをしなければという思考に変わる気がしました。そうなるまでにどれだけの時間がかかるかはわからないですけど、そういう強さが親にはあると思うんです。
――その強さを取り戻す上で、子どもの存在は大きいと思います。よく親は子どもを育てているようで子どもに育てられているなんて話も聞きますが、そういう実感はありますか。
子どもによって親にしてもらっているなというのは、本当にそう思います。親も、親をやるのは初めてじゃないですか。だから、すべてのことが初めての連続で、そのたびに壁にぶち当たって、一生懸命乗り越えていくわけですけど。その支えになるのは、目の前にいる子どもたち。ひとみも、(娘の)七実の影の大黒柱感に助けられているところは大きいと思います。
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