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テレビでもお馴染みのモーリー・ロバートソン氏が、日本の食に関して気になる指摘を行っています。安全であるとされてきた日本の食が、必ずしもそうではなくなっているという話なのですが、これはどういうことでしょうか。

 

ある日、ロバートソン氏がある飲食店で食事をしたところ、同伴者とともに強い食あたりを起こしたそうです。そのお店は、SNSで大きな話題となっており、メディアにもよく登場する、いわゆる行列ができるお店だったとのことですが、高級店を標榜している割には価格が異様に安く、接客も高級とはいえないもので、ちぐはぐな印象だったと氏は述べています。

食あたりについては、明確な因果関係が分からないため、具体的な行動は起こさなかったそうですが、価格を優先するあまり衛生管理が不十分だったのではないかと疑問を呈しています。

ロバートソンさんのケースがそうだったのかは、個別の話ですから何とも言えませんが、日本における食の安全が近年、怪しくなっている可能性は十分にあり得ることでしょう。

10年前には、ある焼肉チェーン店でユッケを食べた客が集団食中毒を起こし、5人が死亡するという、以前の日本では考えられない事件が発生しました。ユッケは生肉ですから、流通や調理に際して衛生面で細心の注意が必要であることは言うまでもありません。食中毒を起こした店舗は、激安ユッケを売りにしており、流通過程で十分な衛生管理が行われていなかった可能性が指摘されています。

つい最近も、中身が赤みがかった「レアなとんかつ」がSNS上で大きな話題となり、「本当に大丈夫なのか?」と物議を醸す出来事がありました。

豚肉を生で食べるのは危険であり、十分な加熱が必要であることは言うまでもないことです。お店としても「レアなとんかつ」を標榜していても、しっかり加熱した上での提供だと思いますが、全ての店がそうした対応をしているのか、それとも、話題作りを優先し安全をないがしろにする店が存在するのか、消費者にとっては判断のしようがありません。

近年、日本社会が貧しくなっていることや、長く消費が低迷していることから、飲食店の経営環境が厳しくなってきました。各店ともSNSなどを用いた宣伝に必死ですし、ギリギリまでコストを削るところも増えています。そうした中で、十分な管理を行わないまま食材を出してしまう店が増えてくることは容易に想像ができます。

統計的に見て食中毒の発生件数は、コロナ危機の影響もあり以前より少なく推移していますが、消費が回復したこともあり、今後、件数が増える可能性があります。

ロバートソン氏は、今後の日本においては、価格が高く品質の良い食材を提供する本物の高級店と、話題先行で価格は安いものの、リスクが高い店に二極分化するのではないかと予測していますが、残念なことに、その傾向は顕著になっているように思えます。

 
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