とにかくリアルだったのが、隙のない完璧な女性・ソヌが、夫が不倫をしているかもしれないという疑いを抱いた瞬間から、どんどん狂っていく過程。
ソヌが車で夫を尾行するシーンがあるのですが、それがとてもスリリング。
真実はこれ以上知ろうとしない方が幸せかも……と思いながらも、尾行したりスマホを覗こうとしたりするのをやめられない。サレ妻の心情が、大変生々しく表現されていたように思います。
非の打ちどころのない、完璧な妻だったからこそ、みるみるうちに壊れていくソヌの様子が、あまりにリアルで……。夫の嘘が一つずつ暴かれていくにつれて、彼女の苦しみが伝わってくるようで、胸がギュッと締め付けられました。
バリキャリ妻vs若い不倫相手。年齢差は28歳……！？
『夫婦の世界』のイライラポイントのひとつが、言い方はとても悪いですが、いわゆる“クズ夫”イ・テオが、正反対のタイプの二人の女性の間を優柔不断に行ったり来たりするところです。
テオのクズ夫ぶりはなかなかのもの。彼は売れない映画監督で、妻の経済力に支えられてなんとかやってきた身でありながら、かなり年下の美女と不倫をしていました。
劇中の年齢設定まではわからないのですが、主人公演じるキム・ヒエ（56）と、不倫相手のダギョンを演じるハン・ソヒは、なんと28歳差です。
ハン・ソヒは今やすっかりトップ女優となりましたが、本作品がきっかけでブレイクしました。実際、ダギョン役のハン・ソヒは、“若くて美しいだけの単なる不倫相手”のイメージに留まらず、とんでもない存在感を見せつけています。
ハン・ソヒって、ミステリアスで繊細で、どこか影のあるオーラを纏っているんですよね。普通に考えたら、妻がいる男性に手を出した憎たらしい悪女でしかないはずなのに、なんだか次第に、彼女のことがかわいそうに思えてくるんです。
女性の私ですら守ってあげたい衝動に駆られてしまい、むしろ「こんな男との不倫で人生台無しにしないで！」と手を差し伸べてあげたいような感覚になりました。
不倫相手のダギョンも確かに魅力的ですが、主人公ソヌも全く負けてはいません。
歳の差にも怯むことなく、ダギョンに正面から闘いを挑んでいくソヌは、とても勇敢。ソヌを見ていると、自立した大人の女性ならではのカッコ良さや、経験を重ねてきたからこそ得られた品性など、若い不倫相手にはない部分がたくさんあります。
実際にダギョン自身も、ソヌに対する劣等感や敗北感を抱いているので、見ている方もスカッとせずにはいられません。「女は若さだけじゃないんだからね！」と背後からヤジを飛ばしたくなったほど。
二人の女性の間でどっちつかずに揺れ動く夫には怒りしか感じませんが、二人とも正反対のタイプでありながら、手放したくないと思うだけのそれぞれの魅力があるというのはわかります。
どんなにひどい裏切りをされても、ダメ夫から結局離れられない妻
しかし何度も疑問を抱いたのが、なぜこれほどに魅力のある美しい二人の女性が、クズ夫・テオを取り合いしているのだろう……ということでした。
ダメ男というのは、なぜか女性を魅了する不思議な力があります。その多くは、女性に「この人は私がいてあげないとダメだ」と思わせるのが上手いんですよね。テオはまさに、その典型的なタイプ。
結局ソヌも、「自分がいてあげないと生きていけない夫」との共依存関係から抜け出せずにいるだけ。それが私たち視聴者をますます苛立たせていきます。
最初はソヌに本気で同情していたけれど、だんだん彼女の行動も理解できなくなって、もはや誰にも共感できずにイライラする……。だけど続きが気になって、見るのをやめられない……！ 私も気づけば、そんな状態にハマっていました。
見れば見るほどイライラするのに、病みつきになって見るのをやめられない。多くの視聴者がその状態に陥り、『夫婦の世界』は大ヒットを飛ばしたのかもしれません。
そして夫のクズっぷりは、回を重ねるほどその度合いを増していきます。韓国ドラマ史上、ここまでクズな男性がいただろうか！？ というほどで、それも見どころのひとつ。究極のイライラドラマ『夫婦の世界』、ぜひご覧ください。
世の妻たちが怒りで震えた！『夫婦の世界』が大ヒットした理由
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構成／山本理沙
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