パリ在住のライター・エッセイストであり、登録者36万人の人気YouTubeチャンネル『GOROGORO KITCHEN』を主宰する井筒麻三子さん。2020年のコロナ禍からYouTubeチャンネルを始め、半年後には登録者10万人を超え、現在も増え続けています。
 

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当日は優しいペールグリーンのワントーンコーディネート。リップはミモレの記事を見て気になっていたというロムアンドのもの。ニット/エンリカ スカート/ドリス ヴァン ノッテン ネックレス/ハンドメイド シューズ/マノロ ブラニク

また4月には初の書籍『GOROGORO KITCHEN 心満たされるパリの暮らし』を上梓。発売を記念した書店イベントのチケットは3分で即完売し、ファンからの熱い要望によりイベントの模様は配信され、各地のファンがその様子を楽しみました。書籍も発売1ヵ月を待たずして2度の重版がかかったほど好調です。

麻三子さん、そして『GOROGORO KITCHEN』が、これほどまでに多くの人を魅了する理由は一体どんなところにあるのでしょうか。紐解くヒントが、4月23日に開催された蔦屋書店六本木店でのイベントでの井筒さんの発言に隠れていました。
 

キッチン撮影では冷蔵庫の動作音を止めるため電源プラグを抜いている

トークイベントでは、ミモレの川良咲子編集長がMCを担当。

蔦屋書店六本木店で開催されたトークイベントでは、今まであまり語られることのなかったYouTubeチャンネル『GOROGORO KITCHEN』の制作秘話が明かされました。中でも会場中が驚いたのが制作時間の長さ。なんと動画の中の10数分の料理&食事シーンを撮影するのに、2日以上かけているというのです。

「動画の撮影と編集を担当しているフォトグラファーの夫ツーさんがとても熱い人で(笑)。かなり時間をかけて撮影しているので、一日では撮りきれず、調理の撮影日と食事の撮影日で、同じ料理を2日連続で作っているんです。夫は『2日同じ夕食で大丈夫』と(笑)。動画では10分くらいの食事中のおしゃべりシーンも、実は3時間以上話して、いいところだけを編集して使っています。キッチンで撮影しているときは、冷蔵庫の動作音がうるさいからと電源を抜いていました。私は『食材、大丈夫かな……』と気になってしょうがないんですけどね(笑)。一切の妥協がないんですよ」と麻三子さん。MCを担当した川良編集長も「全然、ゴロゴロしてないじゃないですか(笑)!」と言ってしまったほど、ストイックに丁寧に作られていることが明かされました。

何気ない日常を切り取っているようで、事前準備にも時間と手間をかけている


YouTubeチャンネルでは、ゲリラ的に撮影していることが少なくない中、ショップを訪ねるVlogでは、すべて事前に取材依頼を行い、許可を取って撮影していると言います。

「編集・ライターの仕事で取材をするときと同じですね。まずは事前にリサーチをして、取材したいお店が決まったら、チャンネルの主旨や今回撮りたい動画の内容などを企画書にまとめて依頼し、取材日程などを相談しています。そのほうが快く撮影に応じてくれますし、あとから『あなたのYouTubeを見て来ましたという素敵なお客さんがたくさんいたよ、ありがとう』なんてお店の方から教えてもらうこともよくあります」と話してくれました。丁寧に作ることで、撮影させてもらうショップの方からも、そして視聴者からも信頼されるチャンネルとして成長していることがわかります。
 

書籍版『GOROGORO KITCHEN』ならではの魅力は?

トークショーのあとは購入いただいた書籍へのサイン会に。書籍の半分はミモレでの連載を元にしつつ、残りは昨年の11~12月の2ヵ月を使って1冊を書き終えたそう。日中はなかなか筆が進まずに、パソコンの前でうんうん唸り、日が変わる直前から「書かないと今日が終わってしまう!」とエンジンがかかり、一気に書き進めるのが麻三子さんの執筆スタイル。


イベント会場では、麻三子さんとの初対面に感動し、涙ぐむファンの方も。また事前に募集した質問には「麻三子さんのような魅力的な人を育てるにはどうしたらいいでしょうか」というものがあったことからもわかるように、『GOROGORO KITCHEN』の内容に興味を持って見始めたら、いつの間にか麻三子さん自身のファンになっている人が多くいます。そして、麻三子さんのファンは、撮影者である夫のツーさんのファンでもあります。ツーさんは動画には声のみの出演ではあるものの、その絶妙なコメントやふたりの掛け合いは動画になくてはならないもの。そのふたりの様子に視聴者は心をなごませ、より一層、パリで暮らすふたりのファンになっていくのです。イベント当日も、会場を撮影するツーさんに話しかけるファンの姿がありました。

会場には、ふたりが買い付けてきたアンティークの食器やカトラリー、ブローチなどが並ぶコーナーが。ファンの間で“麻三子柄”と呼ばれるバスク模様のお皿が特に人気でした。

ふたりの世界観は、書籍版『GOROGORO KITCHEN 心満たされるパリの暮らし』でも味わうことができます。ツーさんが撮影するパリの日常、ふたりの暮らす家のインテリア、旅の風景など、美しく、心に優しく響く写真、そして声が聞こえてきそうな麻三子さんの文章。中では、パリに憧れがなかった麻三子さんが、パリで暮らすようになり、魅了されていく様子、そして最後にはツーさんとのなれそめも語られています。

YouTubeも書籍も、何気ないパリ暮らしやおいしいレシピを紹介しますが、それ以上にファンを魅了しているのは、そこから伝わってくる麻三子さんとツーさん夫婦の人柄や関係性、そしてふたりのセンス。もしこの先、場所がパリから東京に変わっても、ロンドンだったとしても、登録者数は増え続けるはずです。
 

<新刊紹介>
『GOROGORO KITCHEN  
心満たされるパリの暮らし』

著:井筒麻三子  写真:Yas
定価:¥1980
講談社


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パリで働く日本人Mamikoが、暮らしのvlogをYouTubeチャンネル「GOROGORO KITCHEN」でアップし始めたら、日本人だけでなく、世界中の人たち35万人からの熱い支持が! 
色や柄を自由に使った小さいけれど素敵な部屋、フランスの家庭料理も普通の和食も作る日々のおうちごはん、蚤の市でのお宝探し、農家からもらってきた2匹の猫……。
パリのおすすめレストランや、喜ばれるパリ土産もランキング形式でご紹介。
YouTubeでは語りきれない暮らしのコツや素顔のパリのエッセイを美しい写真と共にたっぷりとお届けします。 


撮影/Yas
取材・文/幸山梨奈