4月14日に初の書籍『GOROGORO KITCHEN 心満たされるパリの暮らし』を刊行したパリ在住エッセイスト・井筒麻三子さん。

井筒さんがパリに移り住んだのは2014年ですが、かつてはさまざまなモヤモヤを抱えていたそう。日本では、仕事が充実していても、「結婚は?」という無言の圧力を感じ、女性は若い方がいいという風潮が根強いために、息苦しさを覚えがち。そんな一人だった井筒さんは日本を離れたことで、モヤモヤから解放されたと振り返ります。

 

インタビュー前編
「癒やされる〜」となぜか世界にファン続出!パリの日本人夫婦の“普通の暮らし”が愛される理由【井筒麻三子さんインタビュー】 >>

 


忙しすぎる日々からの脱出


井筒さんが大学院卒業後に就職した出版社を退社したのは32歳の時。フリーランスのライターとして独立し、5年間ほぼ休みなしで働いていました。特に大変だったのが、『クレア・トラベラー』編集部(文藝春秋)に在籍していた頃。2ヵ月に1回は国内外の出張があり、1〜2週間の滞在もザラ。帰宅すると、マンションの宅配ボックスが井筒さん宛の荷物ですべて埋まっていて、管理人に怒られたこともあるそう。

「美容や旅など、好きな仕事をできていたし、本当に楽しくて充実していました。でも、常に疲れていて、さすがにちょっと休みたいと思うように。日本にいたら、来た仕事は断りにくいので、いっそ海外に行こうと考えました。面倒じゃなくて楽な場所がよかったので、言葉がわかる英語圏に行くことにしたんです」

そうして選んだ行き先が、イギリス・ロンドン。あくまで一時的な休みのためで、日本に帰ってくるつもりだったといいます。仕事についても、これだけ忙しかったのだから、帰国してもすぐに依頼は来るだろうと楽観的に考えていたそう。

「結婚」や「年齢」のプレッシャーからの解放


実は仕事の多忙さとは別に、井筒さんが常に気にしていたことがありました。それは結婚について。井筒さん自身は、結婚願望は強くなかったものの、両親や周囲のプレッシャーが半端ではなかったといいます。

「親には結婚しろと散々言われ、お見合い話も勝手に持ってこられたし、『お金は出すから結婚相談所に入って』とも言われました。30代になると、会う人会う人に、『結婚は?』と聞かれるのも、すごいストレス。みんながしているから私も絶対しなきゃいけないという思い込みは確かにありました」

いろんなしがらみを捨て、ロンドンに渡った井筒さんを待っていたのは“自由”。誰も井筒さんに年齢を聞かないし、「結婚してるの?」なんて聞かれることもありません。また、東京にいる時みたいに最新のファッションに身を包んで、人気のレストランで連日会食ということもなく、とても楽だったのです。

「ロンドンに来てみたら、なんて楽しいんだと! 東京にいたら、食やファッションなど全方位にお金がかかっていたけど、ロンドンだと毎日同じ格好でも平気。年齢や結婚についても聞かれないし、日本に帰りたいと全く思わなくなりました」
 

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【画像】本にも掲載した素敵なパリの風景
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