平穏な日常に潜んでいる、ちょっとだけ「怖い話」。
そっと耳を傾けてみましょう……。
 

第27話 双子の勘

 

小さい頃から、双子の弟・隼人は、兄の俺とは正反対に何でもよくデキルやつだった。

地元の中学に進む頃には、「隼人と彰人ってマンガみたいな双子だよな~」なんて言われる始末。

 

隼人は文武両道、似たような顔のはずなのに、絶妙にパーツの配置がよくて清潔感満点、女子受けバッチリ。一方の俺はどうにもゆるいムードでお笑い担当、野郎ばかりに囲まれて、楽しく、むさくるしい青春を過ごした。

高校は辛うじて一緒だったが、大学入試では命運が分かれる。超有名大に現役で入った隼人に対して、俺は名もなき大学になんとか滑りこんだ。まあこの頃になると、もう周囲も俺たちを比べることに飽きて、ネタの領域。

「え!? 隼人くんあの三住商事に入ったの!? ちょっと彰人、これはいよいよマンガみたいな展開だね。しがない中小企業の営業マンと商社マンじゃ、年収も生活もダイブ違うよ。あれ、私、彼氏選び間違えた?」

高校1年生から付き合っている諒子はそんなふうにつっこんでくれたからホッとした。2人でハハハ~と力なく笑う。諒子の言う通り。

俺たち双子の距離は、そのあたりから加速度的に離れつつあった。
 

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夏の夜、怖いシーンを覗いてみましょう…。
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