平穏な日常に潜んでいる、ちょっとだけ「怖い話」。
そっと耳を傾けてみましょう……。

 

第28話 誰かが見ている

「この電車に乗ったらいけない...」駅のホームで突然手を掴まれた彼女。話しかけてきた奇妙な女の正体_img0
 

×3度目の正直

〇2度あることは3度ある

……3回目の司法試験に失敗したとわかったとき、頭に浮かんだのはそんな言葉。

法科大学院を出て丸3年。一度働いてお金を貯めてから入ったので、今年でもう29歳になる。司法浪人と言えば聞こえはいいけど、要はただの無職。それでいいんだとうそぶくには、女の20代はやるべきことがありすぎる。

――もう諦めなきゃならないかもな……。

この数年は、家庭教師とライターのアルバイトをしたり、貯金を食いつぶしたりしてなんとか勉強を続けてきた。アパートの家賃5万円と奨学金の返済もあって、本当にお金がなかった。

卒業して1年目は司法予備校に通ったけれど、2年目と今年はその教材を使ってひとりで勉強。ときどき卒業した大学院の担当教授に論述の答案を見てもらう以外は拠り所がない。アルバイトで生活費を稼ぎながらの勉強は、思った以上にハードな日々。

今年こそは絶対に合格しなくてはならなかったのに。

どのくらいの時間、日当たりの悪いアパートで座り込んでいただろうか。気づけば15時半。16時半から家庭教師のアルバイトが入っている。こんな時でも仕事だと思うと体が動くのだから、「真面目一徹の徹子」とからかわれるんだ。

私は白いシャツにデニムという着の身着のままではあったが、財布とスマホ、ノートと筆記用具、参考書をエコバッグにつっこんで、ふらふらとアパートを出た。
 

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夏の夜、怖いシーンを覗いてみましょう…。
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