推理ものの作品でよく見かけるのが、バディもの。シャーロック・ホームズとワトソン、明智小五郎と小林少年など、古今東西さまざまなバディが登場します。現在、なかよしで連載中の人気マンガ『ギフテッド』に登場するのは、超優秀な若き刑事。彼は非凡すぎるからか独特なキャラクターで、警察内部でも異端扱いされているようですが、とある事件をきっかけに男子高校生と出会います。刑事と男子高校生のバディものってどういうこと? と思うかもしれませんが、これがまたいいんです!

『ギフテッド』(1) (KCデラックス)


飛び降り自殺の現場に居合わせた、非番刑事と男子高校生。


とある街の道路にある植え込みで、ショートカットの女性の遺体が発見されました。そこに現れたのがサングラスをかけた、チャラい男性。現場を封鎖している警察官に注意されそうになるのですが、彼は警視庁捜査一課の刑事・天草那月(あまくさなつき)と名乗ります。たまたま非番で現場を通りかかったとのこと。

 

早速、現場の状況を確認すると、その女性は、頭から落ちて首の骨を折ったことが死因の様子。目の前には3階建てのビルがあり、そこから落ちたのかと思われました。天草はおもむろに、遠巻きに様子を見ている人たちに、「この女性が落ちるところを見ませんでしたか?」と声をかけます。

 

すると、メガネをかけたおとなしい男性がすっと手をあげました。近くのカフェで窓際に座っていると、屋上に女性が立っていて、ピョンと飛び降りたというのです。その証言を聞いて考え込んでいる天草の背後から突然、「殺人だよ これ」という声が聞こえます。声の主は男子高校生で、さきほどカフェから女性が飛び降りるところを目撃したという男性を指さして、「殺したのはその男だ」と断言します。

 

いきなり犯人と名指しされた男性は、当然のことながら怒りだします。しかし、実は天草もこれが自殺だと思えずにいたのです。周囲にもっと高いビルがあるのに、なぜ3階のビルから飛び降りたのか、証言者の男性が座っていたカフェは現場から40mも離れているのに、なぜメガネをかけた彼が、ビルの屋上にいたショートカットの人物が女性とすぐ認識できたかなど、疑問点があまりにも多かったからです。

一つひとつ怪しい点を鮮やかに挙げていく天草を前に、証言者の男性は動揺しはじめます。実は彼が女性を殺した犯人で、あえて「自殺するところを見た」と証言して、警察が自殺と判断するよう促していたのでした。走って逃げようとした男性の動きを封じ込めたのは、さきほどの男子高校生。彼のおかげで、犯人を確保することができたのです。天草が高校生に礼を言い、自分の名刺を渡すと、高校生は四鬼夕也(しきゆうや)と名乗りました。天草は四鬼に、なぜあの男性が犯人だと気づいたかを訪ねます。すると、「視えたんだよ ソイツが人殺しだってことが」と一言。「視えた」とは一体どういうことなのでしょうか?

 

四鬼が現場を立ち去った後、現場にかけつけた天草の上司が、「またお手柄ね!」と彼を褒めます。しかし、いまいちスッキリしない天草。というのも、17歳でMIT(マサチューセッツ工科大学)大学院を首席で卒業し、在学中に会社を起業して売却し、資産30億円を持つ自分よりも先に、フツーの高校生が同じ答えを導き出したことが許せなかったというのです。大人げない……。

 


プールで発見された女子高生の遺体。これは事故じゃない!


自分大好きなエリート刑事と、不思議な男子高校生はこのあとすぐに再会することになります。なぜなら、四鬼の同級生である女子生徒が、高校のプールの底で亡くなっていたからです。女子生徒は水泳部に所属していて、全国大会を目指して早朝からプールで泳いでいたことがあったため、現場の状況から、今回も誰もいないところで不慮の事故に遭ったのではないかと思われました。

しかし、それに異を唱えたのが四鬼。「これは事故なんかじゃない」と断言するのですが、それを立証できるだけの証拠がありません。現場に来ていた警察は四鬼の言う事に耳を貸さなかったため、四鬼は、先日の飛び降り自殺に見せかけた現場で天草からもらった名刺に書かれていた携帯番号に電話をかけたのです。

 

すぐに現場である高校のプールにかけつけた天草ですが、四鬼の主張を信じたからではありません。四鬼はとある人物を犯人だと断言するのですが、天草は、女生徒が殺されたと思われる時間に、婚約者のもとにいたという完璧なアリバイがあると言って聞かせます。それでも、「視えるんだって」と主張を崩さない四鬼。

 

プールで発見された女生徒は、事故ではなく他殺なのか? 犯人は誰なのか? そしてその犯人は、四鬼が主張する人物なのか? といった謎の答えはぜひ試し読みで確認してみて!
 

犯人が「視える」男子高校生と、非凡な頭脳で名推理を行う若き刑事


ところで、四鬼はなぜ犯人を名指しできるのか? というのは大きな謎です。実は彼には異能があり、人を殺した人間にまとわりつくモノが視えるというのです。戦争で誰かを殺してしまった兵士などには紫っぽい煙が、犯罪として殺人を犯した犯人にはドス黒い影みたいなモノが視えるとのこと。また、現場で耳を傾けると、殺された人物が死の直前に感じたことが聞こえるとも。そんなことを言われても、天草もにわかには信じられません。でも、思うところがあったのか、天草は四鬼の言うことを信じてみることにして、犯人と思われる人物のアリバイが崩れないか、頭を巡らせていくことになります。

いくら犯人が「視える」といっても、証拠がなければ警察が捕らえることはできません。異能の持ち主と思われる四鬼が視たものを、MITを17歳で首席卒業した天才・天草が証明する。こうして高校生と刑事のバディが誕生するのです。

四鬼は変わった名字の持ち主ですが、実は、四鬼神流古武術の跡取り息子。5年前に母が殺されたため、いまは家政婦と二人で道場兼自宅に暮らしています。母を殺したと目される犯人は行方不明なのですが、本当にその人物が犯人かはわからず、四鬼はいつか真実を明らかにしたいと願っていたのです。

人を殺した人間にはドス黒いもやが視えるという異能を周囲に知られないように振る舞っていた四鬼は、グイグイといろんな事件に巻き込んでいく天草から距離を置こうとしていました。しかし、天草の類まれな頭脳や人間性に触れるにつれ、少しずつ心を許し、バディとして行動を共にすることを決意します。毎回、さまざまな殺人事件を二人がどう解決するかは本作の読みどころですが、四鬼の過去が明らかになる過程も気になるところです。

物語の原作を担当するのは、『金田一少年の事件簿』『BLOODY MONDAY』など大ヒット作を手掛けた天樹征丸さん。8月からは東海テレビ×WOWOW共同連続テレビドラマ『ギフテッド』も放送開始(8月12日から東海テレビ・フジテレビ系全国ネットでSeason1、10月14日からWOWOWでSeason2がスタート)。いま大注目の作品です!

 

【漫画】『ギフテッド』第1話を試し読み!
▼横にスワイプしてください▼

続きはPalcyへ!!>> 

『ギフテッド』
原作/天樹征丸、漫画/雨宮理真 講談社

若き天才警察官の天草が出会ったのは、ある秘密の能力を持つ高校生・四鬼だった。四鬼の学校で事件が起こったことで、二人は再び出会い――。原作は『金田一少年の事件簿』『BLOODY MONDAY』など大ヒット作の原作者・天樹征丸。ある才能(ギフテッド)を持つ二人を巡る、新感覚バディ・ミステリー。