こんにちは、医療ライターの熊本美加です。

更年期世代の女性が集まると、「机の角に足をぶつけた」「スカートの裾が絡まって転んだ瞬間についた手が痛い」「ちょっとした段差につまづいて足首をひねった」など、慌てん坊エピソードがてんこ盛り。「やだ〜年かしら〜」なんて笑って慰めあってきましたが、最近はやや雲行きが怪しくなってきました。

負傷した部位の痛みや腫れが治らず、病院で診てもらったら「骨にひびが入っていた」「骨折していた」との報告がじわじわ増えてきたのです。これが、いわゆる更年期以降の骨の衰えなのでしょうか……。

明日は我が身と怯えながら、今回お話をお聞きしたのが女性専門の整形外科「ゆりクリニック」 院長の矢吹有里先生。矢吹先生は女性の健康寿命の鍵を握るのは骨だといいます。

 

「平均寿命と健康寿命という言葉をよく耳にすると思います。日本人女性は世界一平均寿命が長いのですが、実は健康でいられる期間は日本人男性と大差がなく、晩年の平均12.5年は寝たきりで過ごしてる人が多いです。

家事や子育て、親の介護など、いろいろなことから解放され、いざ自分の人生を楽しもうと思った矢先に骨折して寝たきりになってしまう……。そうならないために、あなたが何歳であっても骨の強度をマネジメントし続けることが重要です」

更年期以降、急速に弱まってしまう骨。どうやって守っていけばいいのか、その方法についてお聞きしました。

前回記事「肩こり、腰痛、足のむくみ。マッサージに駆け込む前に「整形外科」に相談だ!」>>

 


ちょっとした刺激で骨折! 閉経後の骨クライシスはなぜ起きる?


更年期以降、女性の骨折が増えるのはなぜでしょうか?

「理由はふたつあります。

ひとつは、骨密度の低下。骨密度の維持には女性ホルモンが深く関わっているのですが、閉経が近づくと女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、閉経前後で約20%も骨密度が下がります。その方のもともとの骨密度によって個人差はありますが、将来の骨折が心配な方が出てきます」

 

「もうひとつの原因は、加齢による感覚の鈍化です。よけたつもりの壁の角にぶつかったり、ちょっとした段差にひっかかってしまうことが増えます。これは、視力や聴力といった感覚器の老化により、距離感やバランス感覚に少しずつ誤差が生じてくるからです。

また、エストロゲンが減ってくると筋力が低下し、筋肉や腱の柔軟性も失われて硬くなってきます。それによって正しい姿勢を保つことが難しくなったり、全身のバランスが不安定になり、転びやすくなってしまうのです。

ぶつけやすく転びやすい状態で、さらに骨が弱っていると、骨折のリスクは格段に高まります」