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さて今回のネタは、なんとなく始まりつつあるインボイス。「記載漏れがあるので請求書をもう一度……」というやり取りがピンポンのように何度も行われ、非課税のものに「インボイスがないと」と注意され、領収書がない電車賃とか自動販売機の特例的処理もおぼつかず、国税庁はインボイスQ&Aを日々こっそり更新し、結局のところ公取委は「免税業者切り」は放置状態で……と、各所から悲鳴のような言葉ばかりが聞こえてきます。

 

以前、ミモレの不定期連載「ニュースなことば」で取材した際、たぶん日本で誰一人完璧に理解していないこの制度について、そして消費税のめちゃくちゃな理不尽さについて、私なりにものすごーく勉強したのですが――そのときに思い出したのが60年代に描かれた時代劇マンガ『カムイ伝』です。

いやさっぱりわからんけど、と100万人が思ったでしょう、そうでしょう。同作は被差別階級出身で自由を求めて忍者になった少年カムイの目を通じて、江戸時代の社会を群像的に描いた伝説的名作です。

作品の中で私が強烈に覚えているのは、農民がお代官様に年貢米を収めるという場面です。その年は日照りだかなんだかで、収穫量は昨年とは比べ物にならないほど減っているのですが、年貢は昨年と同じだけ収める決まりです。ただでさえズタボロな農民たちは、このままじゃおらたち死んじまう、的な訴えはするものの、役人にボコボコにされながら結局は自分たちの食料になるはずの米も年貢として差し出すことになります。これ消費税とそっくりやないか……と私が思ったのは、消費税が「利益が出ていなくても払わなければいけない」と知ったからです。

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「インボイス制度」で浮き彫りになる消費税の問題。信じ込まされている”益税問題”と、滞納続発の”赤字でも払わされるシステム”

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ウソでしょ、ねえウソだと言って、バカだなジョークにきまってんだろ、とニヒルに笑ってよ国税局さーーーん!

と魂の叫びかましてみても事実は代わりません。というのもね、消費税の計算のとき、「社員の人件費」は差し引く経費として認められていないんです。ですから売上が110万円あり、そのうちの90万円が人件費だとすると、手元には20万円しか残りませんが、そのうちの10万円(税率10%として)は消費税として収めなければいけません。

 
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