数多のストーリーとともに紡がれるリーバイス501®︎
その歴史を垣間見てきました
「衣料品のポケットの補強にリベットを使用する方法」に関する特許を取得したのが1873年。そしてそれが、”ジーンズ”が誕生した年となりました。リベットとは、鋲(びょう)。金鉱で働く作業員たちの「丈夫なパンツが欲しい」というリクエストから作られた、ポケットをリベットで補強した耐久性のあるパンツがブルージーンズの始まりでした。
それは「ウエストオーバーオール」と呼ばれる、作業の汚れから守るためにパンツの上から穿くカバーオール。ウエストにはサスペンダーを留めるためのサスペンダーボタンが施されていたのが大きな特徴です。
初代501®︎が誕生したのは、時を経て1890年のこと。「501」とはロットナンバーで、それがシンボリックなナンバーとして金字塔を打ち立てることになるのです。
永遠の定番は、時代を
妥協せず、細部までこだわり抜く
私の持っている現役の501®︎は、全部で14本。古着屋さんやフリーマーケットで買ったもの、夫が高校時代に穿いていたものや、友達から譲り受けたものなど、そのほとんどが「誰か」のお下がりです。だから生デニムとも呼ばれる洗いをかけていない新品の501®︎リジットデニムを手にしてちょっと驚きました。洗いをかけていないということは、「原型」であり最初の形。手持ちのいろいろも、もともとはここから始まっているのかと思うと、とても新鮮で不思議な気持ちになります。
まず試着したのが、1947年モデル。その説明の前に、その前に出た1944年モデルについて触れておきます。それは「大戦モデル」とも呼ばれるもので、第二次世界大戦の最中に発売されたものでした。アメリカ本国での資材の節約を支援するために、仕様や生地をより簡素化し、デザインも変更しています。アイコンのバックポケットの弓形のアーキュエイトステッチも簡素化するために、糸でなくプリントにしていたというのも「大戦モデル」の特徴なのだそう。
「その後、戦争が終わって新たに作られたいわゆる「47モデル」は、戦後の発展の勢いとともに、生産量がグッと増えました。フィットはよりスリムに。労働者からロックンロール世代へと移行したのがこのモデルです。プレーンでスタンダードなのでトライしやすくて、初めてのリジットデニムに47モデルを選ぶ人も意外といるんですよ」とのこと。
残念ながら私にはちょっと大きかったのですが、47モデルは、太ももからストンと落ちるやや細めのストレートシルエットなのだそう。それにしても、張りがあって、体を包み込んでくれる感じがとても心地よかったです。リジットって、大人の味方! 体のラインを消してフォルムを作ってくれるから、古着のものとはひと味異なる、キレのいい着こなしを叶えてくれる気がしました。
プレスの方が私にお勧めしてくれたのは1966年モデルでした。「66モデル」はウエストまわりに少し丸みを持たせ、シルエットはややテーパードな印象です。
マニア的なエピソードとしては、「66モデル」は製造されたのは1971年までのわずか5年間。ですが、このモデルの登場によって、丈夫なワークウェアの象徴ともなっていたバックポケットのリベットに変わり、バータックという縫製の仕様が初めて採用されることになりました。
家具などを傷つけるという難点を持っていたバックポケットのリベットは、すでに1937年のモデルからポケットの裏地で隠されるようになっていましたが、それでも数年穿き込むと、金属のリベットが生地を破って出てきて身の回りのものを傷をつけてしまうため、構造から見直されたということです。また、71年からは、後ろのポケットにつけられたレッドタブの「LEVI’S®︎」の文字が「Levi’s®︎」に。以前の大文字表記のものはそれ以降「ビッグE」と呼ばれるように。もちろん、試着させていただいた「66モデル」もちゃんと「LEVI’S®︎」のレッドタブがついていました。
この日穿いていった私の501®︎は、夫の友人がサイズアウトしたからとずっと以前に私に譲ってくれたもの。その彼に「これはなかなかの年代物だよ」と言われていました。プレスの方のお話を聞いて、そのことをふと思い出し、バックポケットのよれよれのレッドタブを開いて見てみると「LEVI’S®︎」のロゴで、まさに「ビッグE」。ということは、私より年上だということが判明! もう50年以上前のものを今の私の着こなしの中に普通に取り入れていると思うと、時の重みというか、なんだかありがたい気持ちになります。
タフな作業服だからこそ、50年経った今でも健在なのかもしれません。だとしても、時を経て、色も褪せてもなおその存在が求められるものであり、今の私の生活にも寄り添うものだと思うと、改めてLevi’s501®に畏敬の念を抱かずにはいられません。
同じサイズなのになぜかシルエットが違うと思っていたのも、少し納得。毎年のように更新されるものではないとしても、年代によってシルエットがリマスターされていたということもこの時初めて知ったことでした。
「好き」と軽く言っておりましたが、なんと無責任だったことか。……と、我が身を少し反省しながらも、「デニム界の大物であり主」のような存在を、青春時代から今に至るまで、何気なく自分の基軸としてきたことがちょっとだけうれしかったです。「だからやっぱり頼れる存在だったんだねー」と、改めて感謝してみました。
クローゼットの中の501®、もっともっと愛を持って接しようとつくづく思います。
次回は、現行品の501®に挑戦します! 乞うご期待。
撮影/田中駿伍
モデル・構成・文/松井陽子
前回記事「ベビーカシミヤをまとう冬の贅沢。素肌も喜ぶ、なめらかさの秘密とは?【松井陽子さん】」はこちら>>
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