クロマル、アラン、茂吉の3匹が家猫という時期が長らく続いていました。ブチャと奥さんは、うちに来たら餌をやるような、付かず離れずの付き合いでしたが、10歳以上になっていたことは間違いなく、この2匹のことは常に気になっていました。2018年頃、特にブチャは見るからにやせてきていて、捕獲したほうがいいのではないかと悩んでいました。でも、悩んでいるうちに姿を見せなくなってしまいました。この時ばかりは、「無理にでも保護すべきだった」とすごく後悔しました。

外猫だった頃の奥さん

そんな出来事があったため、2023年に、体調が悪そうな奥さんを見かけた時、保護することにしました。彼女は推定16歳で、「大丈夫かな」と常に気をもむよりも、いっそうちにいてくれたほうが、私が安心だったからということもあります。出会ってから12年以上の月日を経て、ようやくうちの子になったのです。

 

動物病院でエイズ陽性と甲状腺異常が発覚したため、いまは投薬治療中。アランや茂吉と接触しないよう隔離していますが、奥さんの経過は順調で、家族にも少しずつ慣れてきています。捕獲するのに長年苦労したほどだったのに、今の奥さんは外に出たがることはなく、家の中の暮らしを受け入れているようです。

齢16にして家猫になった奥さん。少しずつ表情が和らいできているとのこと

70代で急逝してしまった母は、「この子の保護を最後にしたい」と言いつつ、いろんな猫に手を差し伸べ続け、最終的には1匹の猫を残してしまいました。私も今まで多くの猫を保護して見送ってきましたが、娘に猫を残してはいけないと思っています。

長らく外で暮らしてきた猫を保護しても、必ずしも私に懐いてくれるとは限りません。でも、私がずっと外にいた猫の気持ちになってみたら、そう簡単に人間のことを信用できないと思うので、それでいいと思っています。私は今まで、保護団体さんが面倒を見ている保護猫を引き取ったことはありません。そういう子たちは私がもらわなくても、他の人がもらってくれる可能性があります。でも、道端で出会ってしまったり、うちに顔を出していたりする猫は、私以外の人に温かく迎え入れられる可能性が低いと思うのです。だから、奥さん、アラン、茂吉のように偶然出会ってしまった猫とのご縁を大切にして、最期まで世話したいと思っています。

今まで何匹もの猫を見送ってきました。保護できなかったブチャもそうですが、「あの時こうしておけばよかった」と悔やむくらいなら、その時できる限りのことをやっておいたほうが、私自身も気が楽。最期に、その子をきれいに拭いてお見送りしてあげることにしているのです。


イラスト/Shutterstock
文・編集/吉川明子
 

 

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