夫との衝突を経て、仲良く並ぶ2台のカヤック

CODAという言葉があります。Children of Deaf Adults。映画『CODA』はアカデミー賞を受賞しました。邦題は『コーダ あいのうた』。耳が聴こえない、聴こえにくい親のもとで育つ、聴こえる子ども(聴者)のことをいいます。

配偶者はSpODAという。配偶者には配偶者の生きにくさがある。言った言わないで喧嘩になることがよくありました。

「ちゃんと説明したよ」 「それは目が見えない人に、この書類見せたよ、というのと同じ。大切なことは書いてよ、文字にして話してよ」

短くない年月でした。
SpODA、夫よ、ひとり暮らしは終わったよ。

静かな湖面を眺める、夫婦の穏やかな時間。 (写真:『66歳、家も人生もリノベーション 自分に自由に 水辺の生活』より)

そんなわけで(かどうかはわからないけど)、夫もカヤックを始めました。カヤックが2台に。夫のはスピードが出る型。私のはゆっくり型。底の一部が透明になっているので、水の中が覗ける、遊覧するカヤックです。

琵琶湖、地元では“Mother Lake”母なる湖と呼ばれています。

 


静けさはやさしい音に満ち溢れている

ビンテージの小屋は、住みながらこつこつリノベーション。 (写真:『66歳、家も人生もリノベーション 自分に自由に 水辺の生活』より)

ここは都会の喧騒からは遠く離れた場所にあります。
何も聴こえません。私はそれが好きでした。

でも最近、無音ではなく、やさしい音に満ち溢れている「静けさ」を知りました。

私は重度の感音難聴です。子どものころに発症、それはゆるやかに進行していき、ここ何年かで、そのほとんどを失ってしまいました。

補聴器では補えません。会話はスマホのアプリや筆談で。不便なことはあるけれど、それも私の美しい個性。受け入れようと思っていました。

ただ障害者手帳を、進行したレベルの等級で申請するために、県内の日赤病院の耳鼻科を受診。大学病院での人工内耳の手術を勧められました。

人工内耳のことは知っていました。でも受けたくなかった。失くしたもの(聴力)を求めることへの抵抗があったからです。