国会の衆院予算委員会で発言する上川陽子外務大臣。写真:つのだよしお/アフロ

自民党の麻生太郎副総裁が上川陽子外相の容姿について揶揄する発言を行い、上川氏がこれを受け流すという出来事がありました。麻生氏の発言が論外なのは当然ですが、抗議しなかった上川氏にも批判の声が寄せられる一方、「大人の対応」と評価する声もあるようです。
 
容姿に関する侮辱的な発言に対してどう対処するのかは本人の自由ですが、上川氏が外務大臣であるという現実を考えると、麻生氏の発言に対して反論しなかったことは、日本の国益を損ねる可能性が高いといえるでしょう。

 


麻生氏は2024年1月28日、講演の場で上川氏について「カミムラ」と名前を何度も間違った上、「女性の外務大臣は例が過去にない」と明らかに間違った話をしたあげく、「そんなに美しい方とは言わんけれども」「このおばさんやるね」など容姿や年齢について揶揄する発言を行いました。

説明するまでもなく女性の外務大臣は過去2人存在しており、しかも1人は超有名人の田中真紀子氏です。しかも上川氏は現職の外務大臣であり、麻生氏は現政権のご意見番とも言われています。それにもかかわらず、田中氏のことを完全に忘れていたり、現職の外相の名前を何度も間違えるというのは、客観的に見てかなりまずい事態といえるでしょう。

麻生氏の失言はいつもの事とはいえ、人の年齢や容姿を公式の場で揶揄することがここまで社会問題化する中、同様の発言を繰り返している状況は末期的といえます。麻生氏の言動があまりに常識外れだったこともあり、今回の騒動ではむしろ上川氏の対応に注目が集まりました。

上川氏は麻生氏の発言を受けて、「どのような声もありがたく受け止めている」と述べ、問題視しない考えを明らかにしました。上川氏は日本初の女性首相候補とも言われる人ですが、立場の強い人からの侮辱的な発言をそのまま受け流したことから、一部の人は上川氏の対応を批判しています。

ジャーナリストの浜田敬子氏は、上川氏の対応について「こういう発言は受け流せばいいという間違ったメッセージになる」と指摘しています。確かに上川氏ほどの立場になっても、上からの侮辱的な発言に対して抗議できないとなると、社会的立場の弱い人たちは「声を上げるなど、到底、無理」と思わざるを得なくなります。他人を揶揄する人は、相手が反論しないと分かれば言動をエスカレートするのが常ですから、状況はさらに悪化することでしょう。

一方で上川氏に対しては「大人の対応」「わざわざ事を荒立てる必要はない」として評価する意見が出ているほか、「上川氏がどう対応しようが本人の自由である」といった見解もあるようです。

確かに上川氏が私人であれば、どう対応するのかは本人の自由ですが、上川氏は現職の外務大臣であり、日本の外交を担っている人物ということになると話は変わってきます。

 
  • 1
  • 2