—— 1人で自転車に乗れるようになった、ということでしょうか?

いまでも自転車に1人では乗れませんが、小学5年のころ「自転車のペダルを前に踏み込む」ということができるようになったのです。
それまで娘はずっと、自転車のペダルを逆方向にこいでしまっていました。「前に踏み込む」ということができないため、三輪車もこげなかったのです。

就学前、娘は区の児童発達支援センターで個別の療育を月に数回受けていました。しかし、就学後、主たる療育の場が学校に移ることから、区の児童発達センターで個別の療育は受けられなくなりました。

私は心配になり、完全自費ではありましたが、月に一度小児科に併設されている作業療法に親子で通っていました。

その療育の先生には、ペダルを前に踏み込むという動作は高度であり、娘はおそらく一生無理だと思う、と言われていたのです。

—— 先生に難しいと言われていた高度な動作が、愛育学園に通ううちにできるようになったのですね。

はい。これは、学校の先生が根気強く、サポートしてくださったからだと思っています。

学校の校庭には、いろいろな種類の乗り物がありました。娘は大人用の、補助輪などがない一般的な自転車に乗りたがりました。そんな娘の様子を見ていた担任の先生が、毎朝一緒に自転車に乗り、学校の周りをまわってくださるようになったのです。

先生は荷台、つまり後ろに座り、娘がサドルに座ります。二人羽織のようにして、一緒にハンドルを握って進んでいくんです。娘の足をペダルに載せて、先生はペダルのこぎ方を教えつつ、自転車が倒れないように地面に足をつけてふんばりながら……。

とても骨が折れると思いますが、毎日、何周も回ってくださいました。

そしてある日、娘は気がづくとペダルを前にこぐことができるようになっていたんです。