写真:AP/アフロ

ドジャースの大谷翔平選手の専属通訳を務めていた水原一平氏が違法賭博にかかわっていた問題で、大谷選手は「水原氏の賭博の件は一切知らず、頼んだりしたことはない」という声明を発表しました。

 

普通に考えて、大谷選手がそうした行為に自ら関わるなどあり得ないことですから、とりあえず無関係(あるいは大谷選手は被害者である)という声明を聞いて、安心した人も多いと思います。筆者もとりあえずホッとしているのですが、米国の金融システムについて多少、知見を持つ人間としては引っかかる点があるのも事実です。

大谷選手は日本人にとって希望の星ですから、こうした問題で評判を落とすことだけは避けてほしいと誰もが思っているはずです。その意味で、もし正確に話をしていない部分があるのなら、すべてを明らかにして欲しいというのが多くの国民の願いではないでしょうか。

大谷選手が説明している通り、賭博は水原氏が勝手にやったことであり、大谷選手が被害者であることについて疑う余地はないでしょう。しかし、メジャーリーグのスター選手ともなると、米国社会ではセレブ中のセレブであり、ある種の権力者という扱いを受けます。米国では社会的立場が高い人に世間が求める水準がとてつもなく高く、(ケースバイケースではありますが)一般人レベルの行動様式では著名人として許容されないという厳しい側面があります。

お金に目がくらんでしまったのか、水原氏は違法賭博というやってはいけない世界に足を踏み入れてしまいました。しかし、いくら水原氏がギャンブルに依存しやすいからといって、彼自身は、スター選手を支えるスタッフの一人にすぎません(私たち一般人から見れば、水原氏の立場も相当なものですが、メジャーリーグというのは巨額のお金が飛び交う別世界ですから、あえてこのような言い方をしています)。

そうした人物が、違法賭博の胴元(賭け事を仕切る人)から何億円ものお金を借りる、あるいはギャンブル代の支払いを猶予してもらうという形で間接的にお金を借りることは、常識的に考えて不可能です。

当然のことながら違法賭博の胴元は、水原氏の背後に大谷選手がいることを承知しており、返せなくなった場合には、大谷選手に肩代わりしてもらうことを当初から想定していた可能性が濃厚でしょう。本当にえげつない話ですが、巨額のお金が飛び交う米国のプロスポーツ界には魑魅魍魎(ちみもうりょう)が集まり、スキあらば高額報酬を受け取る選手からお金をかすめ取ろうとします。

大谷選手は被害者ではあるものの、エリートに対して厳しい米国社会では、大谷選手は純朴な被害者とは見てもらえない可能性があります。魑魅魍魎を自ら排除できなかったという点で、エリート失格の烙印を押されるリスクが否定できないのです。こうした状況に遭遇してしまった場合、社会に対して明確に説明する義務が課されますから、日本のようにうやむやにするといった行為では解決できないことも想定しておくべきでしょう。

そうなってくると、大谷選手の今後の評価は、皆が納得できる説明を行っているのかという部分にかかってくるのですが、この点においてどうしても筆者には気になる点があります。というよりも、米国の金融システムについて多少なりとも知見を持っている人であれば、おそらく同じ感覚を持ったのではないでしょうか。