「世間体」に囚われた親が子どもの結婚を阻むことも

 

当事者から親たちに視点を移してみたいと思います。結婚・未婚を選ぶ本人というより、その親世代が、「個人化」と「世間体」に囚われている実態を見ていきましょう。

以前、とある30代後半の女性から、こんな身の上話を聞いたことがあります。

彼女は四年制大学を卒業した後、名のある企業に就職し、仕事を頑張りつつ「婚活」も同時並行で行っていたそうです。彼女の「結婚観」は非常に古風で、ある意味「ザ・昭和」なものでした。彼女の母親は専業主婦で、幼い頃から夫に尽くし、娘にも「やがて大手企業の勤め人と結婚して、(私のように)豊かに過ごしてほしい」と語ってきたと言います。彼女自身、その母親の価値観を受け継ぎ、大きな違和感は抱いてこなかったそうです。

 

ところがある日、彼女は婚活市場とは異なる場所で、「好きな人」と巡り合えました。

二人でいると穏やかに時が過ごせて、幸せを感じる。そんな彼と結婚をしたいと二人で意識するようになりましたが、正直、彼のスペックは、自分の母親が求める条件をクリアしていませんでした。学歴も職歴も、母の希望とは合致しない……。結論として、彼女は家族(母親)の説得に応じて、その結婚を諦めたと言います。

今、こうした話は枚挙にいとまがありません。最近では「毒親」なる言葉も聞かれますが、決定的に精神に害をなすほどの悪意はなくても、自らの価値観を優先するために、子の価値観や意思決定に重大な影響を与えてしまう親子関係の報告や相談が相次いでいます。