大好きなおばあちゃんが認知症で記憶をなくしてしまったとき、孫はどうしたらいいの? そんなある日のできごとをファンタジックに描いた中国絵本新人賞受賞作品が、日本語に翻訳されて出版されました。翻訳は『食堂かたつむり』で知られる作家・小川糸さん。中国のおばあちゃんと孫のかかわりってどのようなもの? おいしいトウモロコシ料理を知りたい! そんなことを知りたくて、中国家庭料理家のウー・ウェンさんにお話を伺いました。

【大好きなおばあちゃんが、記憶をなくしてしまったら?】料理家ウー・ウェンさんに聞く「中国のおばあちゃんと孫のきずなと愛情」<中国翻訳絵本『トウモロコシの おもいで』>_img0
 

ウー・ウェン(Wu Wen)料理家
北京生まれ。1990年に来日。母親から受け継いだ小麦粉料理が評判となり、料理研究家の道へ。中国に伝わる家庭の味を日本の素材で手軽につくれるように工夫を凝らして紹介している。そのシンプルでからだにやさしい家庭料理と、明るく親しみのあるキャラクターで人気を博す。1997年、東京にて「ウー・ウェン クッキングサロン」を開始。小麦粉料理と中国家庭料理を中心に、からだをいたわる知恵に裏付けされた料理をわかりやすくていねいに指導している。著書に『ウー・ウェンの100gで作る北京小麦粉料理』『北京のやさしいおかゆ』(ともに高橋書店)、『シンプルな一皿を究める 丁寧はかんたん』(講談社)、『北京の台所、東京の台所 ――中国の母から学んだ知恵と暮らし』(ちくま文庫)ほか多数。
ウー・ウェンクッキングサロンHP https://cookingsalon.jp/
公式インスタグラム https://www.instagram.com/wuwen_cookingsalon/

『トウモロコシの おもいで』のストーリー
やさしくて何でも知っていて、頼りになるおばあちゃん。孫の「わたし」は、いっしょにトウモロコシ畑に収穫に行きます。一瞬、おばあちゃんと「わたし」の頭の上をたくさんのちょうちょが夢のように飛んでいき、おばあちゃんは記憶を失くしてしまいます――。不安な「わたし」に「だいじょうぶ、あなたのことを忘れたりするもんですか。さあ、うちに帰ってトウモロコシを食べましょう」とおばあちゃんは言い、二人は手を取りあって家路につきます。
 

お母さんが働いている間、おばあちゃんが孫を育てる


――ウー・ウェンさんは中国の北京育ちだそうですね。中国のおばあちゃんと孫は、どのように過ごされるのですか。ウーさんのご家庭はどうでしたか。

ウー・ウェンさん(以後、ウーさん):中国の子どもたちは、大家族の中で育つのが一般的です。日本語の「おじいちゃん、おばあちゃん」には父方、母方の区別はないようですけれど、中国では父方と母方をはっきり分けます。父方のおじいちゃんは、爺爺(イエイエ)、おばあちゃんは奶奶(ナイナイ)。母方のおじいちゃんは老爺(ラオイエ)で、おばあちゃんは姥姥(ラオラオ)といいます。この4人のうちで、孫にとっていちばん居心地がいいのは母のおかあさんである姥姥(ラオラオ)でしょうか。

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中国では、女性も働くのが普通ですから、家族の力を借りて子育てをします。母親が働いている間、小さな子どもたちは祖父母のお世話になるのが一般的。3歳で幼稚園に入るまでは、おもにおばあちゃんが面倒をみるんです。だから、孫とおばあちゃんはとても強い結びつきがあります。

私も、この例にたがわずおばあちゃん子でした。私の子どもたちもおばあちゃんが大好き。私が子どもたちを連れて北京の祖父母のうちを訪ねると、おばあちゃんは子どもたちにいろいろな食べ物を食べさせてくれて、目に入れても痛くないほどのかわいがりようです。かわいいところしか見ていないから、純粋な愛情を注いでくれるんですね。孫たちは今でも「おばあちゃんとおじいちゃんがいちばん好き」と言いますよ。

—— 子どもは愛されるために生まれてきたのだから、かわいいところを見てあげればいいですよね。『トウモロコシの おもいで』の中で、好きなシーンはどこでしょう?

ウーさん:トウモロコシって背丈が高いんです。トウモロコシ畑の中でおばあちゃんを見失ってしまい、「おばあちゃん、どこにいるの?」と「わたし」がトウモロコシを握りしめながら探しているページが好きです。おばあちゃんは絶対「わたし」を置いて行ったりはしないのに、おばあちゃんの姿が見えなくて「わたし」は不安でいっぱいになる……。

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——「どこなの?」って……。

ウーさん:そうです。私ももし孫だったら、おばあちゃんの姿が見えなくなったら悲しくなっちゃうと思います。

薄皮を残してトウモロコシを蒸すと格別なおいしさ!


—— 絵本のお話の最後で、おばあちゃんと「わたし」は、おうちに帰ってトウモロコシを食べます。どんなふうに食べたと思いますか?

ウーさん:蒸して食べたと思いますよ。新鮮なトウモロコシをおいしく食べるのは、これがいちばんですから。

—— トウモロコシを蒸して食べるのですか。

ウーさん:そうです。茹でてももちろんおいしいですが、薄皮をつけたまま蒸し器で蒸すと格別です。そして、食べる人が自分で茎を持って、皮をむきながらいただくんですよ。トウモロコシの持つ甘みをそのまま楽しめますし、なにより衛生的でしょう? 

—— おいしそう! さっそく試してみます。

ウーさん:街角のお店では、味付玉子と蒸しトウモロコシがおやつとして売られていて、風物詩のようになっています。主な食べ物は小麦粉とトウモロコシというほど、北京の人たちにとってトウモロコシはとっても親しい食べ物のひとつです。

中国は医食同源の国ですから、自然なトウモロコシは健康的なイメージがあるんです。ちょうど今の季節は、新鮮なトウモロコシをいただけますよね。甘くてほんとうにおいしいです。

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