チャールズ国王と天皇陛下の息のあった「未来志向」


――日英の協力が強調されているのですね。

大久保さん:はい、晩餐会のスピーチで、チャールズ国王と天皇陛下は打ち合わせをしたわけでもないのに、シンクロして未来志向の話をされているんです。

両国の歴史を踏まえて考えると感慨深いものがあるのですが、戦争の時代について、チャールズ国王は「暗い年月をも含んだ歴史の教訓」、天皇陛下は「友好関係が損なわれた悲しむべき時期」と表現しています。けれども、お二人とも過去の歴史をスルーするのではなく、「それを踏まえたうえで今があり、未来がやってくる」と話されています。

さらに、チャールズ国王は、
「19世紀後半、ウォルター・ウェストンをはじめとする英国人の登山家たちが、日本で目にした風景に魅了され、日本国内にレクリエーション登山を広める手助けをした」
と述べましたが、それに応えるかのように、陛下は、
「裾野が広がる雄大な山を、先人が踏み固めた道を頼りに、感謝と尊敬の念と誇りを胸に、さらに高みに登る機会を得ている我々は幸運といえるでしょう」
とスピーチされています。

――両国の歩みを、お好きな山にたとえられたのですね。

大久保さん:そうですね、山好きの陛下らしいお言葉です。祖父の昭和天皇、父の平成の上皇陛下の親善に尽くした歩みを踏まえたうえで、今の私がある、と話しました。時の流れをじゅうぶん意識された発言だと思います。ご自身の山好きと、これまでの日英関係と皇室の歩みを重ねて表現されて、非常に練られた文章と感じました。

――なんだかちょっとロマンチックです。