フリーアナウンサーの住吉美紀さんが50代の入り口に立って始めた、「暮らしと人生の棚おろし」を綴ります。

【50代からの趣味・住吉美紀】自分の結婚式で弾き語り失敗!楽器が苦手な半生を経て始めた「ウクレレ」が今、こんなにも楽しい理由_img0
 

とにかく楽器が苦手な半生を歩んできた。幼い頃から音楽そのものは大好きだったのに、楽器は別。3歳から“習わされた”ピアノに始まり、ヴァイオリン、ギター、フルートなど色々と手を出したが、どれもまったく芽が出ず仕舞い。

30歳の頃、楽器を諦めようと思い知らされた事件がある。カナダで開いた、元夫との結婚式でのこと。美しいお庭がそのまま海に繋がっているレストランでの、ガーデンウェディングだった。海外のウェディングは生バンドが入るのが主流で、楽器やステージが会場にあった。

私は何を血迷ったか、余興で1曲ピアノで弾き語りをしようと思い立った。準備のため音楽教室に半年ほど通って、好きなジャズスタンダード曲を張り切って練習した。「あんな素敵なガーデンで、海を見ながら弾き語りなんて」と、カナダの歌姫ダイアナ・クラールを妄想し、楽しみに当日を迎えた。デザートに入り、出席者もお酒がまわった頃、いよいよ電子ピアノの前に座り、演奏を始めると、あれれ、指がすぐ迷子に。歌先行でなんとか進もうとしても、不協和音に続く、不協和音。おかしいぞ。不協和音の合間の静けさが痛い。

ガーデン・ステージのすぐ横に建物の出入口があった。お手洗い帰りの、かなり気持ちよく酔いが回った母が通り掛かった。母は、そのまま演奏している私に近づき、マイクに割り込み、大きな声で明るく言い放った。

「はーい、美紀は、昔からピアノがヘタでしたーっ。ハハハ!」
なんて母だ。陽気すぎる。出席者は遠慮がちに笑っていた気がするか、私は恥ずかしすぎて、そのあと最後まで演奏を試みたかどうかすら覚えていない。そして、私は決定的に楽器がダメだと思い知った。

そんな私が、50歳直前から、また楽器に手を出してしまった。ウクレレだ。
ウクレレ自体は10年以上前から持っていた。テレビのロケでハワイに行った際、取材したウクレレ専門店で一目惚れした、ハワイの三大ブランドのひとつ「KoAloha」のものだ。ハワイでは昔から「神の宿る木」と呼ばれるハワイアンコア製、色もデザインも美しく、何より、抱えてポロロンと弦を鳴らした時の響きが最高に気持ちよい。これも出会いだと自分に言い訳をして、日本に連れて帰った。しかし、案の定、弾けない。チューニングも上手くできず、外れた音しか鳴らない。すぐに箪笥の肥やしとなった。

そして、2023年お正月のこと。2日のラジオ生放送ゲストに、ウクレレ・プレイヤーの名渡山遼さんをスタジオにお迎えし、生演奏をしていただいた。演奏が素晴らしかった高揚感からおしゃべりが弾み、自分がウクレレを箪笥の肥やしにしていることを打ち明けた。すると名渡山さんは、「チューニングは弦が新しいうちは上手くいかないのが普通。毎日やっていたら、必ずできるようになりますよ、大丈夫」と優しく背中を押してくださった。

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ウクレレプレイヤーの名渡山遼さんと、初めて練習成果の弾き語りを聴いてもらったラジオの日に。

年始だったからか、私はその場で、ウクレレを今年の目標にしようと決めた。別れ際、名渡山さんに「師匠と呼ばせてください」と伝えた。その日早速、箪笥から久しぶりにウクレレを出した。助言通り、毎日少しでも触ってみることにした。