クローゼットに服を詰め込まないで!
本当に似合うものが見えなくなってしまうから

40代に入り、クローゼットの中身が変わったという中山さん。「見えると悩むから」という理由で、大幅な断捨離をしたのもこの時期だったのだそう。

「Tシャツ、ジャケット、シャツ、チノパンなど、シンプルなものこそ、どんどん変えていきました。ウエストのシェイプが足りないとか、丈が足りないとか、襟の形が少し大きいからもう着ない、とか本当にちょっとした違和感を持ったら変えてみるんです。だって、いちばん似合う定番を持っていれば、いつでもどこでも自分でいられるから。確かに、思い通りのものはそう簡単に見つかりません。だからこそ、2、3年かけて数を省いていく作業をしたんです」

クローゼットに服はたくさん詰まっているのに、着たいものがない。こういう経験をした方、まさにその只中の方も多いのではないでしょうか。そうして、どんどん新しいアイテムを増やしてしまう、まさにアリ地獄状態。

「40代はそれをいちばんやってしまいますよね。雑誌でモデルさんが着ているのを見て、買ってみたもののほとんど着なかったり(笑)。さらに、30代は試着をしなくても自分に合うものがなんとなく分かっていたのに、40代はそうはいかない。体や肌、髪など、さまざまな変化に愕然としている、なんてお話も耳にしましたが、それも自分。受け入れてみてください。そうすると、実は洋服はそんなにたくさんいらなくて、今の私にはいいジャケットが一枚あればいい、とか何が必要か見えてきたりするもの。洋服屋の私が言うのもなんだけどね(笑)。私もかつてはすぐに買ってしまったりしていたけれど、40を過ぎてからは、とことん気にいるまで買っちゃいけない!って粘るようにしていましたね。量ではなく、質。物を増やすことが自分に似合うものを見つける近道ではないということです」

 


自分に似合うものを見つける努力が
未来の自分への投資になる

自分に似合うもの。それは自分にとってのベーシック。ベーシックと呼ばれる服はどこのお店にも溢れているけれど、自分にとってのそれを見つけるのはなかなか難しい作業のはず。

「自分がフラットでいられる服を見つけることです。例えば、私にとって自分らしさとは、大きな口を開けて笑える自分でいること。そんなときに着ている服はこうだろう、楽しいとか悲しいとか自分の気持ちを主張できるひとが着ている服はどんなだろう、そういうイメージを膨らませています。私は、シャツにデニムがいちばん好きです。それが、私にとって大きな口を開けて笑える服ですね」

 

では、具体的に、どうすれば今の自分にふさわしい自分だけのベーシックを見つけることができるのでしょうか。

「私が思うのは、バッグや靴、時計や宝石に逃げないで、ということ。バッグや靴さえいいものを持っていればよい、という考えを捨てるべきです。似合うシャツを知る、似合うジャケットを知る、体型に合うパンツを知る、これが基本。そこに投資をしてこそ、先のおしゃれが変わってくると思います。そして、フワフワとしたフレアスカートしかはいたことがないという方は、タイトスカートを取り入れてほしいですね。自分の人生になかったものを取り入れてみてほしい。失敗を恐れずに、チャレンジしてほしいと思っています。40代からの体をきれいにみせてくれるのは、仕立てのよい服です。ときにそれは値がはるけれど、40代こそ作りのいいものを見る目を養うべき年代なんです」

カーディガンにゴムパンツばっかり着ているおばあちゃんではなく、ジャケットやチェスターコートをかっこよく着こなすひとでいたい、と中山さんは言います。もちろん、それは私たちだって同じ気持ち。でも、洋服にかけられるお金は限られているのが現実で…。

「すべて高い服を買いなさい、と言っているわけではないんです。肩がきちんと入るジャケットってなんだろう、ウエストで着るジャケットってなんだろう、自分が似合うタイトスカートの形ってなんだろうって、そういうことを考え、見つける努力をしてほしいということです。洋服の裏まで見て、どんなふうに作られているか確認してみたり、自分が今まで行ったことがないお店、例えばハイブランドのお店に足を運んで、どんどん試着をしてみたり…。買うかどうかはあとで考えればいいんです。買いに行くのではなく、知りに行く! そう考えてみてください。40代こそ、それを始めるタイミングだと思います。」

ハイウエストのデニムにシャツをインして。ワンツーコーディネートなのに今っぽく見えるのは、このバランスの賜物。
肌になじんだシルバーのジュエリーやビッグフレームの時計。こうしたメンズライクな味付けも中山さんらしさのひとつ。


何気ないシンプルが素敵に見えるひとは、
オーセンティックを知っているひと

最後に、中山さんに聞いてみたかったこと。それは、中山さんが思う、スタイルのあるひととはどんな女性か、ということ。

「そのひとにしかないものを持っているひと。考え方、スタイリング、流行に流されず他人の意見に流されず、自分の意思を持っているひと。そして、オーセンティックを知っているひとですね。オーセンティックというのは、普遍的とかストーリーがあるものということです。一言でニットと言っても、ラム、シェットランドウール、カシミヤなど、それぞれにストーリーがある。『今日はカジュアルでいたいからシェットランドがいいね』とか『大人だから、デニムにはシェットランドじゃなくて、あえてカシミヤよね』とか、そういう洋服に対する知恵がつくと、50代になったときに「シワが刻まれた肌にはすごく上質なシーアイランドコットンが似合う」と、おのずと考えられるようになる。素材を変えるだけでぐんとムードが変わる、そういった知恵をつけることです。隣の誰かの何気ないシンプルが素敵に見えるのは、そのひとがそういう洋服の奥行きを知っているひとだからではないでしょうか。ただトレンドを取り入れればよいというわけではなく、その服がどんなものなのかを知る=オーセンティックを知ることで、コーディネートの幅も広がり、毎日の予定に合わせてコーディネートを考えるのも楽しくなると思いますよ!」


中山まりこさんのようにスタイルのある人になるには?
40代の今するべき5つのこと

【1】自分らしくいられる服をイメージする

【2】似合うシャツを知る、似合うジャケットを知る、体型に合うパンツを知る

【3】仕立てのよい服を見る目を養う

【4】バッグ、靴、時計、宝石に逃げない

【5】物を増やすより、その物に関して知恵と知識を身につける


次回は、2月13日(月)公開です。お楽しみに!

撮影/目黒智子 取材・文/榎本洋子 構成/川良咲子(編集部)

 

 
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