2017.3.7

ミモザの日

行きつけの花店「ル・ベスベ」の中原典子さんに、フレッシュなミモザだけの花束をつくっていただきました。ミモザはマメ科アカシア属で、オーストラリア原産。花の繊細さからすると意外ですが、大木になります

明日、3月8日は国際婦人デー、イタリアでは「ミモザの日」と名づけられています。

家人の転勤で、32歳でイタリア、ミラノに住み始めた頃、ある朝、街中にミモザの花を売る屋台が出ていることに驚かされました。

ミラノの冬はとても寒く、どんよりとしたお天気が続きます。

ミラノっ子たちはそれを「グレーの街」と呼び、早く春が来ることを願います。

この時期はまだ肌寒いですが、花々の蕾はふくらみ、暖かさが少しずつ戻ってきます。

そんな季節の変わり目に、街中が黄金色のミモザで溢れていたのです。

国際婦人デーは、休日ではありませんが、1975年に国連によって定められました。

その起源は、1904年3月8日にニューヨークで、女性労働者が婦人参政権を求めて起こしたデモにあります。

その後、1917年に起こったロシアの二月革命、1923年には日本でもフェミニスト団体が集会を行い、それらの過程を経て、世界的に女性の社会参加の環境整備を呼びかける日になったそうです。

でも、春を待ちわびるイタリアでは、もっとシンプルに、男性が身近な女性たちにミモザの花束を贈り、日ごろの感謝を捧げます。

妻や母、恋人から仕事場の同僚や部下、秘書まで、あらゆる相手にミモザが贈られるのです。

都心のビジネス街では、春を先取りするかのような軽やかなネイビーブルーのジャケットに身を包んだ女性たちが、老いも若きも光の粒のような黄色の花を携え、その色のコントラストの美しさに、1歳の娘を抱えたまま、思わず足を止めて道行く人々を眺めました。

男性たちも、大きな花束を書類鞄とともに抱えて足早に歩くひと、花のひと枝をじかに手に持って自転車で走る若者とさまざま。

生まれて初めて、花を持つ男はいいものだなあ、と感心したことを覚えています。

特にスーツ姿のイタリア男は花が似合います。肩がしっかりしていて首が太い。スーツやシャツが似合うようにできているのです。髪の毛の薄いのなど、まったく気にならないくらい格好いい。それに花を持たせたら、だれでもショーン・コネリーに見えてきます。

いまの日本の男性は、当時に比べるとぐっとスタイリッシュですから、彼らがミモザを抱えて歩く姿を見てみたいなぁ、とも思います。

そして女性たちの、ネイビーを基調にして、甘いピンクの珊瑚や透明感のある琥珀といったアクセサリーをつけたスタイルに、光そのものを束ねたようなミモザは、忘れることのできない素敵な組み合わせでした。

その夜、家人はいつも通り深夜に帰宅。少しだけ期待していたミモザはもちろん、なし。

仕事を終えて会社を出た時には、もはや屋台は一軒も見当たらなかったそうです。

いまなら、あっさり「また来年」と思ったでしょうけれど、小さな娘とふたりだけで過ごす孤独な異国暮らしの日々に、つい涙がポロリ。

若くて、まだまだ苦労知らずだった頃の、懐かしい思い出です。

そんなことを思い出しながら、リビングルームに床置きしたガラス鉢に、ミモザをたっぷり飾りました。

自宅から仕事場へ行く途中にあるミモザの大木。風に揺れ、甘い香りを振りまいて。見上げるとキラキラとして、まさに光そのものです