光野桃「美の眼、日々の眼」

2017.10.10

大自然にストレス吹き飛ぶ! 初秋の根室に旅してきました<後編>

日本最東端の納沙布(ノサップ)岬にやってきました。納沙布灯台は純白で素敵です。いいお天気で北方領土も見えましたが、「望郷の岬公園」には石碑や銅像が立ち並び、他の観光地とは違う空気が。しかし、海はそんなことには関係なく、白い波しぶきをあげていました

根室2日目は、朝まで降り続いた雨が止み、ピカピカの青空が広がりました。

晴れると、空も海も色が濃い。雄大な自然に抱かれているという感覚が迫ってきて、東京の暮らしが脳内から吹き飛ばされていきます。

さあ、行きたかった場所へGO!


納沙布(ノサップ)岬は今日も波高し

枯れた植物が強い風にも倒れずにいる海辺。 ここへは、オホーツク海側と太平洋側の両方からアクセスできますが、見える風景、土地のオーラがまったく違います。より厳しさの感じられるオホーツク海側の道は美しかった。JR根室駅からバスで約44分。風が絶え間なく吹き付けています。


遠近感が狂うほどの雄大さ、落石(おちいし)岬

根室半島のつけね、太平洋に突き出た岬。こんな断崖絶壁の雄大な岬を生まれて初めて見ました。漁港には2つの灯台があり、可愛い! 断崖絶壁といっても草で覆われているので、近くまで行って抱きついてみたくなりますが、入ることはできません。2キロ程度の木道もあります。が、ちょっとさみしい感じ。トイレもないので今回は諦めました。


原初の風景、春国岱(しゅんくにたい)

JR根室駅から国道44号線を15分くらい車で走ると、道路の向こうに突然、姿を現す砂州が春国岱です。ほとんど街中と言ってもいいような場所に、こんな幻想的な森があるとは! 春国岱とはアイヌ語で「シュンク・ニタイ」、エゾマツ林のことだそう。煙るような水上の森はどこか別の星のよう。
木道の上に立つと、右はオホーツク海の根室湾、左は白鳥が訪れるので有名な風蓮湖。その湖の中にある約600ヘクタールの湿地と原生林が、白味がかったグリーンで続いています。有史以来手つかずというこの自然は、2005年にラムサール条約の登録湿地になりました。誰もいない木道を歩いていくと、風の音しかしないなかに、かすかに何かの気配が感じられます。まさに、森は生きている。
木道は砂州に入る手前で行き止まり、森に入ることはできません。手すりに腰掛けて休んでいると、エゾシカの親子がのんびりと草を食みに来ました。近くまで行っても逃げる気配もありません。人間に慣れているのか、守られていることを知っているのか、悠々と食事を続けていました。


アイヌの気配を感じた川

納沙布岬へ、オホーツク海沿いの道を走っているとき、海から続く川を渡りました。秋の陽射しに照らされて、川はのんびりと蛇行し、その美しさに思わず車を降りてみました。何か不思議な印象です。アイヌの子どもたちや家族が楽しそうに遊んでいる姿がありありと目に浮かびました。その夜、明治の冒険家で、アイヌの人々と親しく交流した松浦武四郎のドキュメンタリー番組をたまたまテレビで観ました。その川、ノッカマップ川は、アイヌと松前藩との戦いに深い関わりがある場所だと知り、不思議な思いにとらわれました。アイヌの人々を幻視したのは、根室の自然に洗われて、感覚が鋭敏になっていたからかもしれません。


はじまりはインスタグラムから

根室という場所に興味を持ったのは、VOSTOK laboというアカウントのインスタグラムを見つけた時です。

JR根室駅構内に、毎月10日から15日の5日間だけオープンするカフェらしい、とプロフィール欄を見てわかりました。

とにかく自然の写真が素晴らしく、そのカフェにも行ってみたくなりました。

地元を含めた北海道産の材料にこだわって作られたVOSTOK laboのお菓子は、スコーンやケーキ、クッキー類と、どれもナチュラルかつ軸のしっかりした味わいが素晴らしい。なかでもこの「ふくろうのチーズクリームサンドクッキー」は逸品でした!
根室にいる間、毎日通ってキッシュプレートやコーヒーを味わいました。地元の新鮮な野菜がたっぷり!

カフェを営むのは若いふたりの女性でした。東京から根室の自然に惹かれて移住されたそうです。

料理を生業にするひとはタフという印象がありますが、一見楚々としたお二人も、笑うと豪快で、すこやかで、もう眩しい!

カフェで販売しているお菓子は、全国のフェアやイベント、表参道のコールなどに卸しているため、その仕事の旅をしながら、また根室に戻ってキッチンで研究を重ねるという生活だそう。

若い世代の身の丈の生き方や価値観を感じ、憧れます。

正味2日という短い旅でしたが、根室には特別な何かがありました。

土地の周波数が自分と合ったのかもしれません。雄大な自然は五感を本来のものに戻してくれるのだとも実感。

そして厳しくも美しい自然の中で、自分たちらしく生きる女性…。

またすぐ戻りたい…そんな気持ちになる旅でした。

春国岱でもたくさん見かけたオジロワシ。そのクッキーは、キュッと身の締まった堅めの歯触りがとても美味しかったです。