美味しい食べ物にお値ごろファッション、可愛いアイドルと極楽エステ――その全部が揃った韓国・ソウルは、何度でも行きたくなる旅行先。でもたまには「いつもと違うソウル」も見てみたーい!ということで、編集部・バタやんと、私、ライター・渥美志保の「オチビさん二人組取材班」は一路韓国へ。
最終回の今回は、取材で出会った韓国の女性たちのインタビューをお届けします。働くこと、職場で男性と平等の環境を得ること、出産し子育てすること、仕事と家庭を両立させること――国が違ってもきっと同じ、女性たちの悩ましい問題。韓国の女性たちはどんな風に考えて、どんなふうに乗り越えて、どんな未来を描きながら働いているのでしょうか?
出産・育児で1年仕事から離れると、大手企業には復帰できません
CJに勤めている時に妊娠して退職、4年間は子育てをしていました。韓国では1年以上仕事から離れると大手企業は採用してくれません。それで国立現代美術館に就職しました。国立ですから準公務員扱いで、年収は減りはしましたが仕事復帰することができ、今のキャリアにつなぐことができました。
DDPはソウル市の管轄で、準公務員ですから、育児休暇なども取得しやすく、女性が働きやすい職場だと思います。ただ公務員は数年で機械的に異動させられてしまうので、そこがネックでしょうか。私も広報マーケティングで入り、ファッション文化本部をへて、再び広報マーケティングに……と慣れた頃に異動になってしまい、ひとつの仕事を極めにくいというところがあります。もちろん様々な経験ができるという見方もできるとは思います。
思いがけずファッション業界の分野の経験を得たこともあり、今後は転職も考えています。ゆくゆくはファッション文化マーケティングの世界で尊敬される、後進の手本になるような存在になれたらなと思います。
韓国ファッションを支える縫製技術者たち、その地位を向上したい
大学院でファッションデザインを学び、卒業以来モデリスト(服作りの全過程を一人でできる人)として働いています。転職などはありましたが、結婚、出産を経ながらもずっと働き続けています。縫製業に関しては私も含めて、途切れることなく仕事を続け得ている人が多く、名人と言われる人たちは30年、40年とこの仕事に携わっている人ばかりです。
最近はデザイナーばかりが注目を集めますが、韓国のファッション業界を本当に支えているのは縫製の職人さんたち。業界全体として、最近では女性の方が多いくらいですが、最も女性が多いのは縫製の職人です。ですが労働環境はなかなか改善されません。昨年、イウムピウム縫製歴史館をオープンさせたのは、そうした現状を世の中に知ってもらうためです。現在は副館長として、職人さんたちの地位向上にも努めています。
K-POPアイドルを育てていくことに、人生を懸けています
私の大学は多くの俳優を輩出しているのですが、彼らが才能がありながら世に出ることができない現状にもどかしさを感じ、大学卒業後はスターマーケティングの仕事に。会社を設立したのは、時代の流れに乗って、男性アイドルを育てたいと思ったからです。演技に加え、歌もダンスもできるスターを育てる、その原点がアイドルだと思います。
Newkiddを育てると決めてからは、すべての時間を彼らに費やしていてプライベートは一切なし。アイドルのビジネスと結婚生活を両立するのは女性には難しい、恋愛か仕事か、どうしてもそうなってしまいます。私は彼らに人生をかけていますし。「彼らが音楽番組で1位を獲得したら結婚する!」なんて冗談で言っています。
将来の不安を解消するために結婚する人も、韓国には多いんです
大学を卒業してすぐソウル市に就職し、数年ごとに部署移動をしながら、今年の1月からソウル路7017を管理する部署に所属しています。私がソウル市に就職した10年前は、上司はほとんど男性でしたが、今は女性上司も増えています。ただ男性が多かった時代から、女性だからと不平等に扱われた記憶は、個人的にはありません。でも逆を言えば、だからこそ公務員は女性が多いともいえると思います。結婚していたとしても、民間と比べて、産休や育児休暇などもきっちりと取得することができるんです。
私自身としては、仕事で成功するために結婚から遠ざかったというよりは、そもそも結婚願望があまりなく、気づいたらまだ結婚していないという感じでしょうか。公務員は定年までの安定した雇用が保証されていますし、韓国女性にありがちな「将来の不安を解消するための結婚」を選択する必要性がないんです。
義母の支えで働きながら、「いいお母さん」になるのも夢
大学で美術を学び、私自身が作家活動をしていたのですが、韓国では新人アーティストが生計を立ててゆくのがすごく難しいんです。周囲の作家も同じ悩みを共有していたので、まずは一般消費者に訴える作品を作ってみようと、2013年に「アートシェア」という会社をたちあげました。プロデュースを手掛けるスマホカバーのブランド「Wiggle Wiggle」は、現在は国際的にも展開していて、昨年の9月には日本のラフォーレ原宿にも入店しています。このラインと、新人アーティストのためのプラットフォームをうまく調和させながら成長していきたいです。
昨年の夏に息子を出産し、それでも仕事が続けられるのは、家事や育児を引き受けてくれる義母がいるから。結婚前の交際期間が長かったので、義母は理解して支えてくれているのですが、仕事から帰るといつも赤ちゃんが眠った後で、それを見るとすごく寂しいなとも思います。仕事と両立させながら、「家庭のいいお母さんになること」も私の夢です。
全6回にわたってお届けしてきた「オチビさん二人組取材班」のソウルレポートも今回が最終回です。いかがだったでしょうか。ソウル通の方にも、そうでない方にも、食わず嫌いだった方にも……新しいソウルの発見が何かあったらうれしいです。
渥美志保、川端里恵(編集部)
取材・文/渥美志保
構成/川端里恵(編集部)
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