アロマふくさんも時期が来たらお墓の検討を始めるとのことですし、遺言書も書かれたとのこと。これくらい準備しておけば十分だと思いますが、他にすべきことを強いて挙げるとしたら、遺産の分割について、公正証書遺言書を作成して法的に確実にしておくと、尚良いのかなと思いました。というのも、多くのご遺族のお話を聞いてきて思うのは、身内の死後に揉め事が起こる要因は、ほとんどお金が絡んでいるからです。
ただ、それは法的に正しいというだけではすっきり解決しませんので、日頃から人間関係をできるだけ良くしておくことも大切なのですが……。私が関わった方の中で、一番少ない額でも揉めたのは、200万円を巡って2年間親族が争ったというものです。その方はハートが強かったので持ちこたえることができましたが、精神状態が悪くなる方も少なくありませんので、揉めそうな親族との関係は、整理しておくかその対策を考えておく。このことは難しいけれど、本当に大事だと痛感しています。
もう一つ、これは今すぐ決める必要はないことですが、知っておいてほしいことがあります。それは、独り身の方の場合、自分が亡くなったときどこの葬儀社に対応してもらうか決めておくことも大切だということ。
ものすごく現実的な話なのですが、人間というのは、亡くなったら法律的には“貨物”の扱いになるので、たとえば病院や施設がしてくれることには限界があるのですね。しかし細菌の感染など遺体にはシビアな問題もありますから、誰でも気軽に動かせるものではないのです。ですから、ご自身が亡くなったときに連絡してもらう葬儀社を決めておくと良いのですが、昨今は葬儀社も業界再編が激しい。今決めても、実際に自分が亡くなる頃にはその葬儀社はもうないかもしれません。
ですから今できることは、そういった対応も含めて助けてくれる友達を見つけておくことです。できたら年下の人がいいでしょう。死に関してはどうしても事前に準備できないことがたくさんありますので、自分の命を預けられるくらいの人間関係を今から築いておいてほしいと思うのです。病気になったり、身内を亡くしたり、死にまつわる出来事が起こるたびに、人間関係はふるいにかけられていくものです。それは時に残念な事態に陥ることもありますが、「早い段階でわかってよかった」と思うこともたくさんあると思いますよ。
・相続問題で叔父と絶縁、父の眠るお墓はどうすべき?既婚30代女性の場合
・親から継ぐ家や土地が正直負担…本音を言えない嫁へのアドバイスは
・未婚子なしの私が墓を継ぐ!今できる対策は「人間関係の紐解き作業」
・継母が認知症に…今は疎遠でも継子の私が世話するべきですか【40代女性】
・苦労した母と二人楽しく…30代でマンション購入を考える女性の苦悩
- 金子稚子(かねこわかこ)1967年生まれ。終活ジャーナリスト。終活ナビゲーター。一般社団法人日本医療コーディネーター協会顧問。雑誌、書籍の編集者、広告制作ディレクターの経験を生かし、死の前後に関わるあらゆる情報提供やサポートをおこなう「ライフ・ターミナル・ネットワーク」という活動を創設、代表を務めている。また、医療関係や宗教関係、葬儀関係、生命保険などの各種団体・企業や一般向けにも研修や講演活動もおこなっている。2012年に他界した流通ジャーナリストの金子哲雄氏の妻であり、著書に『金子哲雄の妻の生き方~夫を看取った500日』(小学館文庫)、『死後のプロデュース』(PHP新書)、『アクティブ・エンディング 大人の「終活」新作法』(河出書房新社)など。編集・執筆協力に『大人のおしゃれ手帖特別編集 親の看取り』(宝島社)がある。 この人の回答一覧を見る
- 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
- 1
- 2
終活ジャーナリスト 金子稚子さんの回答一覧はこちら>>