人生100年時代と言われる昨今、高齢の親が再婚する可能性は決して低くありません。そこで持ち上がってくるのが、継親の世話はどこまで見るべき? という問題。できれば面倒を見たくないのが本音だとしても、親族ともなればそこまで割り切れない、という人もいることでしょう。終活ジャーナリストの金子稚子さんが、そんな時の折り合いのつけ方をアドバイスしてくれました。
みかん畑さんからの質問
Q. 戸籍上は関係のない継母が認知症に。どこまで面倒を見るべきでしょうか。
父は私が結婚して家を出た後、再婚しました。継母とはもともと折り合いが悪かったので、父が亡くなった後はほとんど連絡を取っていません。その継母が最近は認知症を患っているようで、お金の管理が全くできていないようです。継母とは養子縁組はしていないため、父が亡くなった今、継母とは戸籍上は関係がないのですが、放っておいてもいいものか……。ちなみに継母には子供はおらず、他の親族も皆亡くなっていて天涯孤独です。継母に会いたくはないのですが、割り切って見捨てることもできず悩んでいます。継母と私は、全員が顔見知りというような田舎の街に住んでいるので、周りからどう思われるかも気になります。(48歳)
A. 直接のやりとりをせずに済むよう、第三者を間に立てる方法を探しましょう。
なるほど。継母に対して法的な責任が発生しているわけではないし、折り合いが悪かったので放っておきたい。でも冷たく割り切ることもできない、と。これまでは“何となく疎遠”という状態でやってこられたのだけれど、継母との関係をどうするかハッキリ決めなくてはいけない時が来てしまったのですね。
もし継母の面倒を見てあげたとしても、誰に感謝されるものでもない。でも見捨てるのは、やはり心苦しい。つまりみかん畑さんは今、道徳的な部分と、本心との間で葛藤されているわけです。そこで、決してパーフェクトとはいきませんが、何とか両方を満たす方法を考えてみたいと思います。
継母はお金の管理ができていないとのことですが、そこにみかん畑さんが直接関わって管理をするのは精神的にきついでしょう。ならば、成年後見制度の中の「法定後見制度」を利用されてはいかがでしょう? 家庭裁判所によって選出された成年後見人に、お金の管理をしてもらうのです。もちろんそのためにはみかん畑さんが動かなければならないこともあるでしょう。が、少なくとも継母と直接関わることは避けられます。
全員が顔見知りというような小さな街に住まわれている、とのことですから、みかん畑さんが直接管理をすると、「継母のお金を好きに使おうとしている」などと言われてしまうこともあり得ますよね。それを避けるうえでも、後見人という第三者を立てるのは一つの手だと思います。ただし制度を利用するための費用がかかりますから、継母の財産にそれを払うだけの余裕があるかどうかも確認する必要はあると思いますが……。余裕があるのなら、そういったプロの方の手を借りたほうがメリットは多いと思います。
一方、継母の認知症に関してですが、後見人はお金の管理や契約など法律行為の代理が主な役割で、介護などに関することはやってくれません。ここでも、介護保険を利用して継母には施設で暮らしてもらうなど、みかん畑さんが直接継母と関わらないようにする方法はいくつかあると思います。役所や地域包括支援センターなどに相談して、ケアマネジャーなどに一緒に考えてもらってもいいでしょう。もちろんこれも、どうするかの決定はみかん畑さんがくだすことになると思います。
そういったことも一切したくない、完全に関係を断ちたいから放っておく、と決めることも、私は悪くないと思います。ただしそこまで割り切るには、相当の覚悟が必要だと思いますが……。
いずれにしても、みかん畑さんが継母の世話を、自分で全ておこなう必要はありません。私がお伝えした方法は一例ですが、もし放っておく覚悟が持ちきれない場合は、このような妥協策を講じるのがよいかと思います。
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- 金子稚子(かねこわかこ)1967年生まれ。終活ジャーナリスト。終活ナビゲーター。一般社団法人日本医療コーディネーター協会顧問。雑誌、書籍の編集者、広告制作ディレクターの経験を生かし、死の前後に関わるあらゆる情報提供やサポートをおこなう「ライフ・ターミナル・ネットワーク」という活動を創設、代表を務めている。また、医療関係や宗教関係、葬儀関係、生命保険などの各種団体・企業や一般向けにも研修や講演活動もおこなっている。2012年に他界した流通ジャーナリストの金子哲雄氏の妻であり、著書に『金子哲雄の妻の生き方~夫を看取った500日』(小学館文庫)、『死後のプロデュース』(PHP新書)、『アクティブ・エンディング 大人の「終活」新作法』(河出書房新社)など。編集・執筆協力に『大人のおしゃれ手帖特別編集 親の看取り』(宝島社)がある。 この人の回答一覧を見る
- 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
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