皆さんは、「親家片(おやかた)」という言葉をご存知ですか? 親が残した家や膨大な物は、故人に対する思い出もあって簡単には処分できないもの。そこで昨今は、親が生きているうちにできるだけ物を減らすよう薦める子も増えているようです。7年前に夫である流通ジャーナリストの金子哲雄氏を亡くし、現在、終活ジャーナリストとして活動されている金子稚子さんは、「親家片」をおこなうときに気をつけてほしいことをお話してくれました。

bamvil315さんからの質問

Q. 家、土地、物etc.…。とにかく持っているものが多すぎる。上手く整理していきたいのですが……


旦那、自分の親の実家、祖母の家など、物が山のようにあります。まだ親や私たちが動けるうちにある程度整理したいのですが、言っても動いてくれずで、どうやってみんなを動かしていけばよいのか分かりません。親が亡くなってから片づけるのは大変だと思っています。そして旦那の祖母は施設に入り、家を私の旦那に譲る、という話もあるそうです。が、相続税もあるうえ、私は自分で管理のできる範囲外のものを持つのは負担に感じています。代々受け継がれてきた土地で米作りなどをしていることもあり、嫁としては「上手く手放していきたい」とは強く言えず。なあなあで引き継がなければいけない状況になるのが不安です。どうしていけば良いでしょうか?(38歳)


終活ジャーナリスト 金子稚子さんの回答

A. 人が物を残したいのは物に込められた思いを残したいから。その思いを受け取りながら片付けをなさってはいかがでしょう。

これは「親家片(おやかた)」と言われて、最近増えているお悩みなのです。ただbamvil315さんのケースの場合、難しいなと思うのは、ご主人の実家の持ち物も絡んでいることです。ご主人の実家の持ち物に対しては、あまりお嫁さんが出ていかないほうがいいもの。どうしても「嫁がしゃしゃり出てきた」という印象を抱かれますし、ご主人のきょうだいも出てきた日には、揉め事に発展することも少なくありません。肉親にしか分からない思いもいっぱいありますから、ご主人の実家側の持ち物に対しては、ご主人のサポートをするだけにとどめておいた方がいいでしょう。ごちゃ混ぜになっていますが、ご主人の実家の持ち物、自分の実家の持ち物、そして夫婦の持ち物、と切り離して考えることが整理のポイントです。

ご自分の実家の持ち物に関しては、娘ですから親に希望を伝える権利はあると思います。その姿を夫に見せれば、夫は「俺もいずれ大変になるな」と気づき、行動を起こそうとしてくれるかもしれません。

ただし親に伝えるときは、切り出し方に気をつけていただきたいと思います。ざっくばらんに「お母さんたちが死んだら片付けが大変だよね〜」などと言える親子関係なら問題はないのですが、死後の話をすると心を閉ざす親というのは意外と多いのです。以前に神戸で「看取りの家」を開設しようという計画があったのですが、地元住民の大反対を受けて頓挫してしまいました。「日常的に死を目にしたくない」などという理由で……。実はこの反対をした人たちの大半が、60代だったそうです。それくらい人というのは、年齢に関係なく死は他人事ですし、考えたくないものなのです。


かく言う私も、死を前提として準備をするということを積極的に勧めていません。それよりも私は、「今の生活を良くするために片付けをしませんか?」と言いたいと思っています。物が多いと転んだりしたら危ないでしょう? そこで暮らしやすくするために少し片づけませんか? と。bamvil315さんも親御さんに対して、そういうご提案から始められてみてはいかがでしょうか?

 
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