10月に入っても暑さが続きますが、暦の上ではすっかり秋。
ファッションもメイクも秋モードにシフトしたら、ライフスタイルも秋らしくしたいですね。
秋の夜長におススメなのは、非日常を楽しむ読書の時間!
今夜は、とっておきの本を用意して、ファンタジーの世界へトリップしてはいかがでしょう?

 

『霧のむこうのふしぎな町』


「日常」と「ふしぎ」をえがくファンタジーの第一人者として、数々の作品をてがける作家・柏葉幸子さん。彼女のデビュー作『霧のむこうのふしぎな町』は、ジブリ映画『千と千尋の神隠し』にも影響を与えたことでも知られています。

今年刊行された愛蔵版は、アクアブルーのカバーをはずすと、霧が晴れてふしぎな町があらわれるようなイメージにうっとり! 箔押しのタイトル、窓アキ加工のカバーからのぞく美しい表紙。大切な人に贈りたい、そして、自分へのご褒美にしたくなる一冊です。

心躍る夏休み、1人旅に出たリナ。
霧の谷の森を抜け、視界が晴れると、そこには美しい建物が立ち並ぶ、ふしぎな町が……。
リナと、「めちゃくちゃ通り」の奇妙な住人の出会いを描いた本作は、「子どものころに読んだ!」という方も多いのでは。
しかしこの物語、大人になってから読むと、いっそう味わい深いのです。

町の下宿を訪れたリナは、いきなり、主人である魔女に「働かざるもの食うべからず」と厳しく宣言されてしまいます。
魔法使いの末裔たちが暮らすふしぎな町で、それぞれの店を訪ね、働かせてもらうリナ。はじめは、「自分にできることなんて何もない」と頼りない様子でしたが、風変わりな面々と交わるなかで、時に反省し、時には勢いで、問題をひとつひとつ解決していきます。
今までの常識が通用しない状況や、自分が歓迎されない環境は、だれにとっても辛いもの。でも、自分にできることを見つけて、体当たりで交流していくことの大切さを、改めて気づかせてくれる物語です。
ぶっきらぼうでいじわるに見えた魔女が、実は愛すべき人物だったりするところも、ほっこりと心を温かくしてくれます。

『つづきの図書館』

 

つづいてご紹介するのは、大人の読者から特に人気の高い一冊。
『つづきの図書館』は、バツイチ職ナシ40代女性が主人公という、ファンタジーとしては、ちょっとめずらしい設定の作品です。
物語は、主人公の桃さんが叔母の介護のため故郷に戻り、地元の図書館に臨時採用された事をつづる手紙で幕をあけます。
(この手紙が誰に宛てたものだったのかは、物語の最後に明かされます。)

桃さんが図書館で出会うのは、「読んでくれた人のつづき(=その後の人生)が知りたい」と絵本から出てきてしまった、裸の王様やあまのじゃく!
彼らに巻き込まれ、人探しをはじめる桃さんの奮闘ぶりにハラハラしつつ、「つづき」を探し当てた人々のドラマがつながって、ラストへみちびかれていく展開に胸が打たれます。
そして、桃さんが抱えていた「ある苦しみ」がほどけるシーンでは、思わず涙が……! 本を愛する人、本に愛された人すべてに贈る、心あたたまるファンタジーです。


待望の新作『湖の国』

『湖の国』の発売は10月15日予定。

柏葉作品の魅力は、日常を生きる主人公が、日常ならざるモノたちとの出会いをとおして、自分とむきあい、新たな人生へと踏みだしていくところ。
そんな、「日常」と「非日常」のあわいで起きるドラマを描き続ける、柏葉さんの新作が、この秋に刊行されます。
社会とうまくかかわれず孤独に生きる少女・ミトと、湖からやってきた不思議な女性・ヨシノの交流をえがく『湖の国』。この冒頭部分を、刊行に先がけてご紹介。試し読みをぜひチェックして!

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『霧のむこうのふしぎな町 地下室からのふしぎな旅 天井うらのふしぎな友だち』
柏葉幸子:作 タケカワこう:絵


デビュー作『霧のむこうのふしぎな町』、アニメ映画の原作となった『地下室からのふしぎな旅』、そして『天井うらのふしぎな友だち』の「ふしぎ」三部作を収録した愛蔵版。

 

 

青い鳥文庫 『霧のむこうのふしぎな町』
柏葉幸子:作 杉田比呂美:絵


総ルビ、ソフトカバー、新書版サイズで読みやすい、親子で一緒に楽しめる青い鳥文庫版。



 

 

『つづきの図書館』
柏葉幸子:作 山本容子:絵


「本をさがすんですよね。」
「いやいや。本をさがしてもらいたいのではない。青田早苗ちゃんのつづきが知りたいんじゃ。」
「本ではなくて、青田早苗ちゃんのつづきですか?」
田舎の図書館でおこった不思議なできごと。
いやおうなしに巻きこまれてしまった司書の桃さんはーー!? 柏葉幸子と山本容子のコラボレーションでおくる、感動ファンタジー。

 

『湖の国』
柏葉幸子:作 佐竹美保:絵


学校になじめず、家庭でもうとまれ、ひきこもりがちだったミト。介護施設でバイトをはじめたものの、担当した沢井のおばあちゃんが買ったという田舎の家をめざして、家出をしてしまいます。田舎の家では、湖からやってきたというヨシノと出会いますが……。(2019年10月15日刊行予定)

柏葉幸子

1953年、岩手県生まれ。『霧のむこうのふしぎな町』で、第15回講談社児童文学新人賞、日本児童文学者協会新人賞受賞。『ミラクル・ファミリー』で、第45回産経児童出版文化賞受賞。『牡丹さんの不思議な毎日』で、第54回産経児童出版文化賞受賞。『つづきの図書館』で、第59回小学館児童出版文化賞受賞。『岬のマヨイガ』で、第54回野間児童文芸賞受賞。

構成/北澤智子