同棲生活の長いカップルの日常を描いた『喰う寝るふたり 住むふたり』などで知られる漫画家・日暮キノコの最新作『個人差あり〼』。「異性化」を切り口に、「性」とは「家族」とはなにかを考えさせられる社会派な意欲作として、ミモレでもご紹介しました。2019年11月22日に最新巻4巻が発売になり、新たな展開を迎えています。今日はそんな『個人差あり〼』のあらすじとグイグイと引き込まれてしまう魅力をご紹介します。

「異性化」とは、あるきっかけで性が男→女、女→男に変わってしまう現象で(現象で、ってよくあることみたいに書きましたが、よくあることじゃない! 成人向けコミック等ではよくある設定のひとつですね)、新しいほうの性を性的に楽しんでしまう、という展開が多いように思います。

 


女の先輩としてお伝えしたいこと


主人公・磯森晶は32歳、2つ歳上の妻・苑子と二人暮らし。結婚5年目で子どもなく、とくに不仲でもないが“低め安定”的な夫婦生活を送っています。

そんなある日、晶は強い頭痛に襲われて倒れたことをきっかけに、突然「女」になってしまいます。驚きながらもわりと冷静に受け入れる妻・苑子。
 

「女」としての先輩・苑子の助けを得ながら、服を揃え、メイクを覚え、徐々に女の生活を楽しんでいく晶。

一方で、セクハラや生理を体験し、悶絶するシーンもあります。(女の先輩である私たちは、そうなのよ〜、通勤するだけでも大変なのよ〜、と先輩風を吹かせたくなりますね)。

以前ご紹介した際に、夫が突然女になったら、いろんなことが共有・共感できて、結構いいかもしれない、と書きました。しかし、子どもが欲しいとあれば別問題。35歳を迎えるにあたり子どもが欲しい苑子は、夫が元の性に戻る手段やきっかけはないか、必死に調べます。

一方、晶は、会社の先輩である雪平先輩(男性)にドキドキするようになってしまい……。身体だけじゃなく、心も女になってしまったのか……雪平先輩も晶を女として意識するようになり!?  


「個人差あります」というパワーワード


作中、
個人差あります
という言葉が何度か出てきます。

「異性化」という漫画的な設置に、一定のルールがあるのか、個人差があるのか、と、作品の設定自体を作者自身が“イジる”、高度なメタフィクション。

「個人差があります」と言っちゃうと、漫画の設定が成り立たないじゃーん!っていう。ドラゴンボールが7つ集まっても、個人差によって何か起こったり、起こんなかったりしたら、ドラゴンボールのストーリー自体が成り立たないわけで。

そこで「個人差があります」という言葉の威力を思い知らされるわけです。
晶も作中たびたび、これは「女」だからなのか、晶“個人の特性”なのか考えるシーンが出てきます。

あなたが普段、当然のようにやっていることや、やらされていることは、「女」だからなのか、個人の特性なのか……意外な個人差に気付くかもしれません。
 

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『個人差あり〼』

著者  日暮 キノコ 講談社

どこにでもいるような、何の変哲もない、ただの夫婦のはずだった。ある日、夫に「異変」が起こるまでは……。家族をテーマに次々と作品を発表してきた日暮キノコが挑むのは、夫婦の中の「男と女」。空前絶後の衝撃作。