2020年から、小学校で必修化されるプログラミング教育。
新年度をひかえ、ニュースなどでさかんに取り上げられていますが、どんなものかご存じでしょうか? ここでは、プログラミング教育の疑問にこたえる記事を、3回連載でお送りします。

 


1回目▼プログラミング教育って? 小学校必修化の本当の目的とは
2回目▼幼児からプログラミング教育は必要? おすすめ教材と大切なのは「対話」
3回目▼プログラミング教育でどうなる? これからの社会

 

1回目では、プログラミング教育の目的&プログラミング的思考の基礎について、2回目は、幼児からのプログラミング教育について解説しました。
連載最後の3回目では、「プログラミング教育」の背景と、これからの社会がどう変わっていくのかについてお伝えします。


「超スマート社会」に必要な人材って⁉


IoT、AI、ビッグデータ、ロボティクスがあらゆる分野にひろがり、私たちの生活がこれまでにない段階へ進む「超スマート社会」。その実現にむけて、新しい技術と知識を活かせる人材が、いま必要とされています。

こういった「これからの社会」に関連する話題では、「STEAM教育」「IoT」「Society5.0」などのキーワードがたびたび出てきますが、どの単語も「正直よくわからない……」と、頭を抱える読者も多いのでは。

まずは、「プログラミング教育必修化」と関連して報じられることの多い「STEAM教育」、そして「GIGAスクール構想」について簡単にご説明します。
 

<STEAM教育(スティームきょういく)>
Science(サイエンス:科学)
Technology(テクノロジー:技術)
Engineering(エンジニアリング:工学)
Art(アート:芸術・教養)
Mathematics(マスマティクス:数学)
これら5つの要素をもりこんだ教育手法をSTEAM教育といいます。もとは理数系重視の「STEM(ステム)教育」が発祥でしたが、現在はそこに独創性・創造性や教養を含む「Art」が加わり「STEAM教育」となりました。
※STEM(STEAM)教育は、アメリカのオバマ前大統領が演説で述べ、全世界で広く注目されるようになったと言われています。そして日本でも、AI時代に必要な思考と能力の教育として、教育現場での取り組みが始まっています。


<GIGAスクール構想(ギガスクールこうそう)>
GIGAスクール構想とは、児童生徒向けに1人1台の学習用端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する計画です。
平たく表現すると、学校で子ども1人につき1台の端末を使える環境を整える、という構想です。
※「GIGA」はギガバイトのギガではなく、「Global and Innovation Gateway for All」の略。「多様な子どもたちを誰ひとり取り残すことのない、公正に個別最適化された学び」を、全国の学校現場で実現させようというものです。

 

2020年度から必修化される「プログラミング教育」は、まさに、このSTEAM教育の代表例ともいえるのではないでしょうか。
そして、GIGAスクール構想の実現により、令和時代のスタンダードとして、PC 端末も鉛筆やノートと並ぶ「学習のマストアイテム」となっていくでしょう。

いま、きたるべき「超スマート社会」の実現に向けて、さまざまなジャンルの技術や知識を、社会の問題解決のために、横断的に活かせる人材が必要とされています。この度の「プログラミング教育必修化」をはじめとした「STEAM教育」、そして「GIGAスクール構想」は、これからの社会で活躍する「新たな人材」を育てるための、重要な取り組みなのです。


もっとくわしく! 超スマート社会


そもそも、超スマート社会って、いったいどんな社会なのでしょう?
超スマート社会は「Society5.0(ソサエティゴーテンゼロ)」と呼ばれていますが、 今の私たちが生きる社会とどのように違うのでしょうか。
 

【プログラミング教育】オバマ前大統領提唱のSTEM教育進化版とは_img0
内閣府ウェブサイトより引用)

「Society5.0」は、これまでの、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会のこと。私たちが目指すべき未来社会の姿として提唱されています。

【プログラミング教育】オバマ前大統領提唱のSTEM教育進化版とは_img1
内閣府ウェブサイトより引用)

 

<IoT(アイオーティー)>
「IoT」とは「Internet of Things」の略で「モノ(物)のインターネット」と訳されます。
いまや、スマホやPCだけでなく、スマートスピーカー、テレビ、車、エアコンなどさまざまな「モノ(物)」が「インターネット」につながっていて、ネット経由で操作することが可能です。さまざまな「モノ(物)」がインターネットに接続され、モノどうしがインターネット上でお互いに情報交換することで、制御できる仕組みが「IoT」です。

<AI(エーアイ)>
「人工知能」の事。「Artificial Intelligence(アーティフィシャル インテリジェス)の略。

 

今後は、IoTがさらに発展して、世の中のあらゆる事がデータ化されるようになるでしょう。そして、あつめられた膨大な情報(ビッグデータ)を、AIによって収集・解析し、社会の課題解決のため横断的に活用することが可能になるのです。

イノベーション(技術革新)で、住む場所や年齢、性別、言語による格差がなくなると、どうなるでしょうか。
さまざまな人の多様なニーズに合わせて、モノやサービスを必要な時に、必要なだけ提供できるようになれば、社会のシステム全体が最適化され、「経済の発展」と「社会的課題の解決」を両立できる社会が実現するでしょう。
このような、先端ITC技術の活用より、私たちの生活が、より豊かに、より便利に、より持続可能になっていく課題解決型の社会こそが「Society5.0」と呼ばれる社会なのです。


新しい時代で活躍するために


新しい時代で求められるのは、イノベーション(技術革新)で新たな価値を生み出すことのできる人材です。
そして、あらゆるものがインターネットでつながり活用されていく社会において、コンピュータやプログラミングの考え方にもとづいた「問題解決型」思考=「プログラミング的思考」は、どんな分野、どんな職業においても必要とされる、「普遍的な能力」となっていくでしょう。

このように、4月から全国の小学校で始まる「プログラミング教育必修化」の背景には、大きな社会変化のビジョンがあるのです。
新しい世代が「プログラミング教育」を始めるこの機会に、大人である私たちも「プログラミング的思考」を身につけて、新しい社会の変化に、適応できるようになりたいですね。

プログラミング的思考の基礎についての記事はコチラ!

幼児からはじめるプログラミング教育についての記事はコチラ!
 

【プログラミング教育】オバマ前大統領提唱のSTEM教育進化版とは_img2
 

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青山学院大学社会情報学部 松澤芳昭准教授 
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2020年6月13日(土)開催予定 (参加には事前申し込みが必要です)

場所:国立情報学研究所(学術総合センター)
(東京都千代田区一ツ橋2-1-2)

お問い合わせ
国立情報学研究所オープンハウス事務局
メール:oh@nii.ac.jp
https://www.nii.ac.jp/openhouse/(4月中旬公開予定)

*新型コロナウイルス感染拡大のため開催を見送る場合がございます

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廣野清美(ひろの・きよみ)
静岡大学教育学部を卒業。小学校教師を務めたのち、講談社パルへ入社。小学生用教材を企画開発出版。子供だけでなく、保護者、講師等の指導にも当たる。JAXA宇宙教育リーダー資格取得。『はじめてのプログラミングえほん』の監修をつとめるほか、パソコンなどの電子機器等を使わない「アンプラグドプログラミング」の講座を、NHK文化センターで開催。そのほか、国立情報学研究所でコンピューターサイエンスパークや、こども霞ヶ関見学デー(文科省)にて講座を実施。私生活では2女の母。長女は慶応義塾大学卒、次女は東京大学卒。

構成/北澤智子

 

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