そして、ご主人から何かと当たられるとのこと。たしかにご主人もお辛いのでしょう。相談者さんもそれを分かっているから、これまで我慢をされていた。ですが申し訳ありませんが、ご主人は甘えていると思います。相談者さんも、それを分かっていいと思います。「夫が自分に当たるのは甘えだ」と。お仕事に、2人の子育てに、夫の看病……。何もかも一人で背負わず、まずは「これは夫の甘えだ」と受け止めてください。
そのうえで私が思うのは、甘えを受け入れるのが大人ではない、ということです。夫婦といえども一線は引くべき。それが大人の姿勢だと思います。腰が痛くて辛いことは、どんなに気の毒に思っても代わってあげることはできません。それはご主人の問題で、相談者さんの問題ではありませんから、最後はご主人が自分一人で向き合わなければならないことです。なのに……、繰り返しますが、ご主人は甘えています。本当にすべきは、相談者さんに甘えることではなく感謝することなのに。
支え合いとは、決してもたれ合いではありません。自分も相手も自分自身の足でしっかり立って初めて、支え合うことができるのです。それは、どちらが病気のときでも同じです。
愛が深くて、何でもしてあげたくなる気持ちは理解できます。でも線引きは必要。「私もできる限りのことをしているつもりだけれど、あなたにこんなふうに言われてとても傷ついた。あなたの苦しみを代わってあげることはできないし、もうこれ以上は無理」と伝えてもいいかもしれません。甘えを鷹揚に受け入れるのが女性の度量、なんてことは思う必要はないです。ご主人はもちろんですが、相談者さん自身も大人になる時が来ているのだと思います。どうか毅然と生きてください。そしてご自身のことを大事にしてくださいね。
・退職後もやりたいことが見つからない…酒に溺れる元企業戦士の苦悩
・父を亡くしたトラウマから恋愛や結婚が怖くなってしまいました【30代女性】
・父と夫を亡くし、最近生きることに疲れを感じます【40代女性の相談】
・パワハラが不妊治療に影響…注意されても直らないダメ上司を見返すには
・周囲は子育て真っ最中、旧友との会話にズレ…「子なし女性」が感じる孤独とは
- 金子稚子(かねこわかこ)1967年生まれ。終活ジャーナリスト。終活ナビゲーター。一般社団法人日本医療コーディネーター協会顧問。雑誌、書籍の編集者、広告制作ディレクターの経験を生かし、死の前後に関わるあらゆる情報提供やサポートをおこなう「ライフ・ターミナル・ネットワーク」という活動を創設、代表を務めている。また、医療関係や宗教関係、葬儀関係、生命保険などの各種団体・企業や一般向けにも研修や講演活動もおこなっている。2012年に他界した流通ジャーナリストの金子哲雄氏の妻であり、著書に『金子哲雄の妻の生き方~夫を看取った500日』(小学館文庫)、『死後のプロデュース』(PHP新書)、『アクティブ・エンディング 大人の「終活」新作法』(河出書房新社)など。編集・執筆協力に『大人のおしゃれ手帖特別編集 親の看取り』(宝島社)がある。 この人の回答一覧を見る
- 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
前回記事「「長生きしても仕方ない」子に先立たれた祖母に周囲がしてあげられること」はこちら>>
- 1
- 2
終活ジャーナリスト 金子稚子さんの回答一覧はこちら>>