少女漫画界のカリスマ的存在、漫画家・萩尾望都さん。『ポーの一族』『トーマの心臓』、テレビドラマ化もされた『イグアナの娘』、今年完結した『王妃マルゴ』といった作品を生み出し、萩尾さんの漫画とともに育ってきたという方も多いと思います。デビューして50年を越える今でも挑戦し続ける萩尾さんは、この夏全編デジタル描き下ろし作品『ガリレオの宇宙』の無料公開にチャレンジ。iPad Proを使って描かれたというこの作品の制作秘話を伺いました。実際に萩尾さんが描かれた下絵の工程も公開します。
萩尾望都さんの新作は、iPadで全工程を制作!
この夏、appleのApp Storeで無料公開された萩尾望都さんの新作『ガリレオの宇宙』。App Storeのためにオリジナルで描きおろされた作品です。これまでのコマ割りの漫画ではなく、縦スクロールという点にも注目!
萩尾望都さんが実際にiPadで描いた下絵から完成までの工程を紹介
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ラフスケッチから彩色まで、iPadで描かれたこの作品。こちらは実際に萩尾望都さんが手掛けられたものです。アプリを使って複数のレイヤーを作って、後で同じ画面に合わせていく様子がわかります。
とっても興味深いですね!今回は、この作品の制作秘話を萩尾望都さんにリモート取材でお伺いしました。
萩尾望都さんが初めてのiPadで描いた作品『ガリレオの宇宙』制作秘話インタビュー!
今回の作品はイタリアで見た景色に感化
2020年1月にイタリアの首都、ローマを訪れ、ガリレオ・ガリレイの生涯を描いたオリジナル漫画『ガリレオの宇宙』を創作されました。実際にイタリアに赴いたことで、この作品にどんなインスピレーションを得たのでしょうか。
「ガリレオが判決を受けたというサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会に隣接する修道院というのがあるのですが、そのすぐ近くの図書館が印象に残りました。天井が高く縦長の図書館で室内は2階があり、壁に沿って回廊があるのです。部屋の壁中に古い本がジャンル別にきれいに並べられ、いくつかの高い窓から光が差し込み、荘厳な雰囲気が漂っていました。アリーナには講演用の机、その前には聴衆用に中世のダンテスカ(多分レプリカ)の椅子がずらりと並んでて壮観でした。それから、ローマ特有の松の木と青空。強い採光。ヴィラ・メディチの庭の植物や、温室を書いた天井画など、作品に役に立ちました」
「ローマでは『スカイ・ガイド』というアプリで、400年前のガリレオが判決を受けた日の星空を見ました。本当に美しかったですね。ちょうど夕暮れ時で暮れてゆく空の色に星が重なって、古い星座の絵が浮かびあがり……。急に異なる世界に飛んだかのような体験でした。そして、今回の作画の星座のイメージが広がりました」
イタリアで見た風景が今回の漫画のインスピレーションに
イタリアは萩尾さんにとっても思い入れのある場所だそう。イタリアの魅力を伺ってみました。
「イタリアは、食事が美味しいですね。パスタ、パン、きのこ、白アスパラ、 アイスクリームと、どの店に入っても絶品。お菓子屋さんにも必ず訪れます。クッキーやチョコレートはお土産にかかせません。それから教会を見て回るのが好きです。内装と外観。時代と地方によって少しづつ変化があるので、面白いんです。どんな順番で巡ったかは忘れてしまったのですが、観光バスでフィレンツェからボローニャ、ラヴェンナ、シエナ、ペルガモン、ヴェニスへと行ったこともあります。もっと南ではシシリア。モンレアーレ大聖堂が見たくて、パレルモに行きました。イタリアは 中世の香りが未だ色濃く漂っている歴史の国。美しく、繊細です」
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