「洋子さん、私のとっておきの夏のドレスを試してみない?あなたに絶対似合うと思うの!」

バカンスの終わりが、淋しさと共に近づいてきて、センチメンタルになっていた私に、友人が楽しい提案をしてくれた。

お洒落な人の素敵なクローゼットを見せてもらう。
厚かましいかしら、と思いながらも、好奇心に負けて二つ返事。

勧められたのは、アイボリーに薄い藍色と少しだけ紫を混ぜた様な、優しくデリケートな色合いの、シフォンの様に柔らかなドレスだった。

夕暮れ時には優しい色のドレスを【パリジェンヌのリゾートファッション】_img0
流れるようなドレープが美しい。歩く度に、表情を変える夢の様なワンピース

背が高く、モデル体型のマダムが着たら、さぞかし素敵だろうに――。

 

ふんだんに布が使われており、かなりのボリュームが出るシルエット。彼女にはジャストサイズの身丈は、私には明らかにお引きずり状態だろう。

鏡の前でそんなことを考えていると、魔法の様な速さで、私の着こなしを直してくれる。

夕暮れ時には優しい色のドレスを【パリジェンヌのリゾートファッション】_img1
夕暮れ時の雲の色みたい。ベルトは太いコード状になっていて、先端のフリンジがアクセントで可愛い。私では絶対に思いつかないコーディネート!

「ベルトでウエストラインをブラウジングして、丈はこんなもんだよね。このベルト、面白いでしょ。襟は抜いてね。スカート部分の前ボタンは膝位置まで外して、と。
はい、出来上がり!」

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ひし形の様な、台形の様な、不思議な形のプールは2メートル強の深さ。夜中に裸でサッと泳いでクールダウン

アペリティフに皆でパティオに出て、陽が落ちていくのを静かに眺めた。ふと、古い言葉が脳裏をよぎる。黄昏――

街の灯りが一寸も無かった時代、夕暮れ時に辺りはとっぷりと暗く、誰かが訪ねて来ても顔が判らない。

誰そ彼(たれそかれ)、あなたは誰ですか?
私の愛しい人であれば良いのになぁ――。

ああ、日本語ってなんて美しいんだ。

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いつもとは違う自分を発見した様でハッピーに♡

また来てね。また来るよ。

夕暮れ時、マダムの優しいドレスに身を包んだら、彼女にハグをされているかのように、じんわりと心が温まり、なおいっそう切なくなった。
 

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