突然ですが皆さん、「猫」はお好きですか。
身体よりだいぶ小さい箱に入る君。舌をしまい忘れる君。一点を凝視しながらフミフミする君……。猫の不思議行動は我々をとろけさせ、その度に動画ファイルが増産されていきます。もうiCloudも受け止めきれないっ!……そんな猫を愛してやまない人々のハートを鷲掴みにする一冊を見つけました。その名も『猫奥』です。

ブスッとした顔。籠からはみ出た手。ふてぶてしい佇まい……。カバーからして、作者の山村東さんが猫を愛してやまないことが伝わります。『猫奥(1)』 (モーニング KC)


本作の舞台は、江戸時代の大奥。そこで働く女性たちの多くは生涯独身で、我が子のように猫をかわいがっていたといいます。
そんな大奥で最高の地位にあった「御年寄」のひとり、滝山も猫好きな女性。しかし、上司に気に入られようと彼らの子猫を率先して貰っていった同僚に遅れをとっているうち、滝山だけが猫を飼えないままになっていました。
しかも滝山は、大奥では勤勉で厳しい性格として知られ、皆が恐れるほどの「キリッ」とキャラで通っていただけに(本当は表情が乏しいだけ)、今さら後輩たちの前で無邪気に「モフモフ〜」「かわいいにゃ〜ん」などと言って猫を愛でることができません
さらに三白眼で常に怒っているように見える風貌も相まって、「猫を飼っていない滝山=猫嫌いの人」というレッテルを貼られてしまいます。

ただ見ているだけで後輩を怯えさせてしまう滝山。本当は心優しい猫好きな女子。


そんな滝山の心をかき乱す存在が、大奥の最高権力者、姉小路の飼い猫「吉野ちゃん」です。
神出鬼没な吉野ちゃんは、急に現れてゴロゴロと甘えてきたかと思えば、次の瞬間には滝山をガブリ。

吉野ちゃんのかわいさに思わず相好を崩す滝山。


心ゆくまでぎゅーしてモフモフしてかわいがりたいのに、吉野ちゃんはそれを許しません。または、そんなタイミングがあっても、滝山は周囲の目を気にして「キリッ」としてしまう。その態度がさらに「猫嫌い」キャラを強化してしまうという悪循環が、笑えるやら切ないやら……。

しかし、後輩の前ではすぐに「キリッ」としてしまう滝山。


また、作者の山村東さんは大学の歴史学科で学び、卒論でも江戸時代をわざわざ選んだほどの「江戸マニア」だそうで、大奥で猫が飼われていた記録があることを踏まえ、「大奥×猫」というテーマを思いついたのだとか。
もちろん大の猫好きでもあり、現在、2匹の猫とともに生活されているそうです。

 

江戸と猫。山村さんの両方への愛がにじみ出ている『猫奥』を、ぜひ下記の無料公開から堪能してみてくださいね。


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『猫奥』

著者:山村東
講談社
640円(税別)

江戸時代を舞台に、大奥に仕える独身女性・滝山とツンデレ猫・吉野ちゃんのほのぼのした日常を描くショート漫画。

構成/小泉なつみ