【質問4】辛いものを食べるとなぜ鼻水が出るのですか?


もしかすると、これは比較的多くの方が経験したことがあるかもしれません。私も辛いものが好きで、韓国料理やインドカレーなどをよく食べに行くのですが、必ずと言っていいほど鼻水が止まらなくなり、ティッシュペーパーが必需品になります。

世界には実に様々な研究があるもので、いろんな辛いものでどのぐらいの人に鼻水が出るのか、アンケート調査をした研究があります(参考5)。その研究結果を見てみるとこのような感じでした。

 

これをみると、様々な辛い食べ物で、半分近くの方に鼻水の症状が出ているのが分かります。これはなぜでしょうか。

 

ここには、辛いものに含まれる「カプサイシン」と呼ばれる物質にヒントがあるようです。

カプサイシンは、実は味覚ではなく痛覚を伝える神経を刺激することが知られています。すると、強い痛みの信号が舌や口の中の神経から脳へと伝えられることになります。強い刺激の信号が入ると、人の体は反射的に防御反応が起こるようにできています。痛みを抑制しようとするのです。この抑制の働きをしているのが副交感神経と呼ばれる神経です。

人の自律神経は、大きく交感神経と副交感神経に分けられます。古くから、交感神経は「闘争と逃走の神経」と呼ばれ、狩猟をしたり戦ったりする時に使われる神経であることがわかっていました。一方、副交感神経は休みをとったり食事をとったりする時に活躍する神経です。

前者の働きについては、激しい運動をしている時を想像してみてください。血管をギュッとしめて、心拍数をあげて、全身に必要な血液を行き渡らせます。一方で、激しい運動中に排便などしている余裕はないですから、腸の動きなどは止めてしまいます。

一方の副交感神経は、休みや食事をとっている時の神経なので、血圧や心拍数は落とし、血管は拡張します。また、唾液を分泌させ、腸を動かし、食事の消化を助けます。腸が活発に動くおかげで便も出やすくなります。

カプサイシンをとると、強い刺激が口から伝えられ、瞬時に体が副交感神経の働きを高める反射が起きることが知られています(参考6)。この働きが過剰になると、体の様々な部分で副交感神経が働き、口の中では唾液の分泌が増え、鼻では鼻水を出し、頭皮に汗をかき、涙腺では涙を多く分泌したり、血管が広がって顔が赤みを帯びたりします。また、腸の動きが活発になりすぎると、下痢をしてしまったりもします。

辛いものを食べると、涙が出る、汗がだらだら出る、すぐ顔が赤くなる、下痢をしてしまう、といった方もいらっしゃるかもしれません。その秘密は、この副交感神経にあったのです。

これらの症状には、ヒスタミンは全く関与しておらず、アレルギー反応とは全く異なるため、アレルギーに対して用いられる抗ヒスタミン薬は全く効かないことも知られています(参考5)。症状は同じでも、有効な治療が異なる理由が少しお分かりいただけたでしょうか。
 

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