【モラハラ】「本当は良い人」という思いが罠になる

 

モラハラとは、「モラル・ハラスメント」の略で、倫理や道徳(モラル)に反する嫌がらせです。広く捉えると、身体的な暴力以外はすべてモラハラと言ってよいでしょう。次のような行為が、モラハラの例に挙げられます。

 

言葉の暴力
・「誰のおかげで飯食ってると思ってるんだ!」「なんの能力もないくせに」「お前なんか一人で生きていけないくせに」などと、配偶者を見下すことを言う
・「ブス」「デブ」など、容姿についてことさらに悪く言う
・携帯のチェックなど、不必要に交友関係や行動を監視、制限する
・子どもに「お前のお母さんはバカだ」など、母親を尊敬できなくなるようなことを言う

態度による暴力
・配偶者の前でため息や舌打ち、支配的な態度に出る
・無視をする

経済的な虐待
・給料の額を教えない。ボーナスが出たかどうかも教えない
・必要最低限の生活費も渡さない
・相手の仕事の給料などを取り上げて渡さない

性行為の強要
・「セックスは妻の義務だ」などと言って、気の進まない性行為を強要する
・拒むと不機嫌になったり、無理にでも応じさせようとする

●「モラハラ」からあなたを守る法律は?
民法 第710条 財産以外の損害の賠償

他人の身体、自由、もしくは名誉を侵害した場合、または他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

●手続きは?
モラハラをする人は、その自覚がない場合も少なくありません。モラハラを受けている側も、「これは自分のための指導だ」「自分が至らないからだ」などと思ってしまう場合もあり、そのため、改善が難しい場合も多いのが現実です。

相手が離婚を拒む場合は、調停離婚になることもありますが、その際は暴言を録音したり、嫌だったことを日記につけたり、メールなどのやりとりを保存したりしておくと、「婚姻を継続し難い重大な事由」の証拠になります。


法律についての知識は、あなたがトラブルに巻き込まれたとき、行動の指針になります。
法律を知っていて、無駄なことは決してないのです。

次回は、「子どもにも教えたい、誹謗中傷や性暴力で泣き寝入りしないための法律集」についてご紹介します!


※掲載されている法律は、以下の内容に基づきます。
民法:2020年4月施行の改正民法の内容 そのほかの法令:2020年3月現在の内容

 

著者プロフィール
上谷さくらさん
:弁護士(第一東京弁護士会所属)。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。保護司。

岸本学さん:弁護士(第一東京弁護士会所属)。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。人権擁護委員会第5特別部会(両性の平等)委員。大阪大学法学部卒。民間企業のコンプライアンス統括部門を経て、2008年横浜国立大学法科大学院を卒業。同年司法試験合格。金融庁証券調査官を経て、2010年弁護士登録。

 

『おとめ六法』
著者:上谷さくら 岸本学
KADOKAWA 1400円(税別)

憲法・刑法・民法といった六法の中から、女性の一生に寄り添う法律をピックアップした本書は、女性の身の周りに潜むトラブルをどこに相談すればいいか、どうしたら自分の権利を守れるのかをCahoさんの愛らしいイラストと共に具体的に教えてくれます。女の子をもつ親、そして男性にもおすすめしたい一冊!


構成/金澤英恵

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