結局、今夜の主役の一人であったはずの朋子は集まりに1時間以上も遅刻して現れた。

そのせいで、22時過ぎに店を出てからも、コートをひらひらさせ「飲み足りない」と口を尖らせている。マックスマーラーのキャメルコート。長身の彼女によく似合う。

「じゃあ、朋子の家で飲み直す?」

早希が提案すると、彼女は「いいね」と満足げに頷いた。

朋子の家は溜池山王にある。彼女は20代後半で離婚を経験しているが、そのあと自身名義で新築マンションを購入したのだ。早希の家から歩ける距離ということもあり、駐在前はかなり頻繁に訪れていた。

「あの、私はこれで……」

隠れるようにして立っていた美穂が、小さな声で申し訳なさそうに呟く。すると透がすかさず「通り道だし送るよ」と言い、彼女をタクシーに誘導した。

その素早さに目を見張る。早希は「あ、うん」としか言えなかった。通りへと出ていく二人……その後ろ姿に再びデジャブを覚える。

昔、美穂がまだ独身でCAをしていた頃のことだ。よく一緒に参加した合コンでもこんな場面が度々あった。

「ごめん。今日は私も帰る」

「え!」

ぼんやり過去を回想していたら、絵梨香までそそくさとタクシーを停めてしまった。いつもならこんな時間に帰ったりしないのに珍しい。

しかし無理に引き止める理由もないので、結局、早希だけが朋子の家に立ち寄ることにしたのだった。

美容医療で、女はいつまでも「現役」でいられる?

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「今夜ではっきりわかった。適齢期に結婚する女と逃す女っていうのはやっぱり最初から何もかも違ってるのよ」

柔らかな革のソファに身体を預け、早希は酔いに任せて愚痴った。

朋子の部屋は相変わらず居心地がいい。インテリアはウッドテイストで統一され、無駄なものがなく綺麗に片付いている。「オス化」しているというのは外での振る舞いの話で、意外にも彼女は家庭的なのだ。

美食とワインが趣味でもあり、出してくれるチーズやワインもすべて上質。おかげでどんどんグラスが空いてしまう。

「私はそもそも美穂みたいにモテないのに積極的でもないし、何年か越しにちょっといいなと思った相手は若すぎておばさんなんか対象外だし……」

いったん吐き出し始めると言葉が止まらない。すると、セラーから新たなワインを出してきた朋子が興味津々で食いついた。

「え、なに。早希、若い男に恋してるの?」

……しまった、口を滑らせた。しかし早希が黙っているとクールな朋子はそれ以上突っ込まず、代わりに真顔で断言してくれた。

「大丈夫、年齢は気にするな。美容医療を使えば女はいつまでも現役でいられる」

「ちょっと、なんなの。絵梨香みたいなこと言って」

早希が吹き出すと、朋子も「これ、さっき絵梨香が言ってたセリフ」と笑った。

「そういえば、絵梨香がヴィーナスハイフについて熱く語ってた。知ってる?あそこの締まりをよくする治療なんだってさ」

「何それ、すごいね……」

今や、そんなものまで登場しているとは。そして絵梨香はそのヴィーナスハイフなるものに手を出したのだろうか。美容系のフリーランスPRをしている彼女はアンチエイジングへの情熱も探究心も尋常じゃない。十分にあり得る話だ。

長らくタブー視されてきた美容医療も最近はかなり一般的になってきた。

賛否両論あるのは当然だろう。しかし早希はもともとコンプレックスだらけであり、さらには加齢でますます失われていく自信を少しでも取り戻せるのなら……頼ってしまいたいと思わずにいられなかった。