POINT ②:「こうじゃなきゃいけない!」を捨てれば、
料理はもっとラクになる


志麻さんのレシピで印象的なのは、「分量や調理時間は目安です」といった前置きや、「味を見て」「様子を確認して」といった一言がレシピに添えられていること。自分の目で見る、自分の舌で好みの味になっているかを確認する、つまりレシピの再現に徹しないことが料理上達への近道だと言います。

「レシピに書いてある作り方一つにしても、本当にその順番で作ることが正しいとは限らないと思うんです。レシピは形式に則って“野菜を切る”ところから始めていたりもしますが、実際の料理では“コンロに鍋を置いて油を引いておく”が一番なわけです。その準備ひとつしておくだけで、切った野菜をまな板からザッと鍋に入れられますし、ザルやボウルを洗う手間も省くことができる。1回レシピを読んでみて、先にやったほうがよさそうなこと、やらなくていいことを考えてから料理にとりかかれば、ムダな動きも省略できて、時間の節約にもつながります

1から10まで丁寧にしすぎない、最初に全部材料を切らない、計量カップ・計量スプーンに頼らないなど、本書の中では志麻さんの「これはやらない」も伝授。

お家で作れるパパッとレシピをたくさん考案している志麻さんですが、調理師として働いていた頃は料理にとても強いこだわりをもっていたのだとか。しかし結婚して家族ができると、「こだわっていたら何も作れない!」ということに気づいたそうです。

 

「今日はイマイチだな、失敗しちゃったなと思っても、楽しく食べられればそれだけでじゅうぶんだよね! と考えるようになりました。料理教室の生徒さんたちを見ていて感じるのは、失敗を怖がる方がとても多いということ。料理は本来“食べること”が目的のはずなのに、“作ること”に重心がいってしまっているんです。だから、レシピの再現にこだわろうとするし、失敗してもその原因がわからなくなってしまう。私自身、何万回と失敗してきましたし、強すぎるこだわりを手放したからこそ学べたことがたくさんあります。
料理に失敗したって、子どもたちに“失敗しちゃったんだよね、味どう?”って聞いてみると、失敗した料理の方がおいしいと言って食べてくれることもあります。大切なのはレシピにこだわることじゃなく、楽しく食べること。そう意識するだけでも気持ちがちょっとラクになると思います」