40歳という節目で、女性は自らの生き方を振り返るものではないでしょうか。
「こんなはずじゃなかった」と後悔しても過去は変えられず、心も身体も若い頃には戻れない――。
これは立場の異なる二人の女性が人生を見つめ直す物語。
女性誌のエディター・進藤早希は、10歳下のカメラマン・北山隼人に心惹かれる。ハプニングから距離が近づくもライバル登場で意気消沈。血迷うのは辞めて仕事に邁進しようと心に誓った。
***
女を幸せにするのは男じゃない
――ああ、やっぱ落ち着くわ……。
久しぶりに出社した朝、進藤早希は穏やかな心持ちでPCに向かっていた。
リモートワークが増え、さらに最近は展示会巡りや撮影でほとんど会社にいなかった。しかしこれからはできる限り来たいとさえ思う。
柔らかな光が差し込むオフィスフロア。聞こえてくるスタッフの談笑。山積みになったアート集やファッション誌……不思議なものだ。家にいるよりずっとホームのように感じる。
新卒で入社して早18年。何度か異動はあったもののずっと大好きなファッション誌に携われている。仕事と人には本当に恵まれてきた。
40歳を前に焦りを感じたり、自分とは真逆のモテ女を前に劣等感を抱いたり、恋愛偏差値の低さに嫌気が差したり……対「男」の局面になると早希の戦闘力は途端に落ちる。
しかしながらそのせいで、というより「おかげ」で仕事だけは手を抜かずに生きてきた。結婚に夢を見ることがいかに危険であるか、婚約破棄された過去で身に沁みているからだ。
男は裏切るが仕事は裏切らない。
それに……恋愛フィールドではコンプレックスばかり刺激されて疲れる。先日、ヘアメイクのミーナに嫉妬を覚えた時も、その後しばらく何も手につかず最悪だった。
こうして好きな仕事をしている時の方がよっぽど楽しいし幸福を感じる。
きっと女が幸せになるのに、必ずしも男や恋愛は必要ないのだ。
【写真】アラフォー女性編集者の日常
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